2023年公共・公的保証債務報告書を発表

(ラオス)

ビエンチャン発

2024年07月05日

ラオス財務省は6月28日、「公共・公的保証(PPG)債務(注1)報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を公表した。ラオスでは2018年公的債務管理法で公債情報の収集や公表を義務付けており、2021年分から財務省ウェブサイト上外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「PPG債務報告書」として公表している。

同報告書によると、PPG債務残高は2023年末時点で138億ドル(GDP比108%)となり、厳格な債務管理の実施と堅調なGDP成長を主な要因として、2022年末時点の139億ドル(GDP比112%)からわずかに減少した。また、PPG債務残高のうち対外公的債務残高は105億ドル(GDP比87%)で、PPG債務全体の76%を占めた。対外公的債務残高のうち60.4%は譲許性融資(注2)で、59%がドル建て、85%が固定金利だと説明している。

実際の公的債務(注3)返済総額は、対外公的債務と国内公的債務ともに大幅に増加しており、2022年の5億700万ドルから2023年は9億5,000万ドルとなった。そのうち商業銀行への返済が74%を占めた。主要債権者への返済の一部が猶予されたことで、当初の返済計画よりも6億7,000万ドル減少した。また、2020年から2023年の累積返済猶予額(元本と利息)は約18億9,200万ドルに上るとした(注4)。国内債務の返済額は、2022年の4兆9,000億キープ(約358億円、1円=約0.0073キープ)から2023年の5兆7,000億キープへ16%増加した。債務返済額は今後も高水準で推移し、2024年から2028年にかけて対外債務は年平均13億ドル、国内債務は年平均5兆3,000億キープに達するとした。

同報告書は、債務リスクとして、公的債務残高の87%が外貨建てのため、キープ安のリスクが高い一方、債務全体に占める1年未満の短期債務や、変動金利による債務の割合が低いことから、金利などのリスクは低いと分析した。また、国有企業やPPP(注5)に関連する偶発債務(注6)は大きなリスクをもたらす可能性があるとし、財務省として財政リスクのモニタリングを開始したと言及した。

政府は債務管理政策を厳格に実施し、公的債務の対GDP比率を2023年の94%から2025年には89%に引き下げることを目標にしている。このため、新規プロジェクトの借り入れは、十分な財務的リターンをもたらす効率的なプロジェクトに制限し、債務外の財源を確保するために、徴税強化や国営企業への貸付金の返済、潜在的資産の活用などを進めるとした。また、低コストで市場から借り入れる目的でソブリン格付け(2023年10月25日記事参照)を改善するために、マクロ経済問題に対処する必要があり、主要債権者との債務再編交渉を続けるとした。

(注1)英語でPublic and Publicly Guaranteed(PPG)debtという。中央政府の債務(対外公的債務と国内公的債務)と政府保証の国有企業債務が含まれる。

(注2)譲許性融資とは、長期間、低利の融資を指す。ラオス政府は商業的借り入れを制限し、譲許的な資金源を模索する方針。

(注3)対外公的債務と国内公的債務の合計。公的保証債務は含まれない。

(注4)世界銀行は中国がラオスに対する債務返済猶予を供与しており、2023年末までに20億ドルを超える可能性を指摘している(2023年12月12日記事参照)。

(注5)PPPとは、公共施設などの建設や維持管理、運営などを行政と民間が連携して行うことで効率化などを図るもの。

(注6)偶発債務とは、現実にはまだ発生していないが、一定の条件の下で将来、債務となる可能性のある潜在的な債務。

(山田健一郎)

(ラオス)

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