欧州委、中国製BEVへの暫定相殺関税措置の概要を事前開示
(EU、中国)
ブリュッセル発
2024年06月14日
欧州委員会は6月12日、2023年10月に開始した中国製バッテリー式電気自動車(BEV)に関する反補助金調査(2023年10月6日記事参照)の暫定的な調査結果を踏まえて、中国製BEVに課す暫定的な相殺関税措置を関係者に事前開示したとして、内容を公表した(プレスリリース)。中国製BEVは中国政府から不公正な補助金を享受しており、EUのBEVメーカーに経済的損失を及ぼす恐れがあるとの暫定的判断に基づく。事前開示した追加関税率はメーカーグループ別に設定し(添付資料表参照)、中国政府や中国企業を含む関係者やEU加盟国に通知した。
欧州委は今後、中国当局と暫定的な調査結果について協議し、WTOのルールに基づく手順で課題の解決方法を探るとしている。協議が不調に終わった場合は、7月4日までに暫定措置に関する実施規則をEU官報に掲載し、掲載翌日から暫定措置を実施する。
現地報道によると、ドイツは対中関係悪化を懸念し、中国製BEVの輸入関税率について、現在の10%から引き上げる場合も、中国側の輸入関税率15%までの引き上げにとどめるよう望んでいた。一方、フランスは大幅な引き上げを求めるなど、加盟国間に意見の隔たりがあった。報道によると、中国は報復措置の対象としてEUの農業と航空分野を名指しして揺さぶりをかけ始めているという。
欧州委は11月2日までに最終措置について結論を出す予定で、加盟国と中国の動向が注目される。
欧州自動車業界、「追加関税より産業競争力の強化戦略」求める
欧州自動車工業会(ACEA)は6月12日付声明で、自由で公正な貿易は重要だが、欧州の自動車産業の国際競争力強化に最も必要なのは「EV(電気自動車)に関する確固たる産業戦略」と述べた(プレスリリース)。欧州自動車部品工業会(CLEPA)は同日付声明で、EUは欧州企業の中国市場参入を妨げかねない保護主義的な措置に頼らず、高いエネルギー価格への対応や、一貫性に欠ける規制の整備に注力し、競争力を強化すべきだと述べた(プレスリリース
)。
ACEAによると、EUのBEV市場で中国製BEV(中国ブランド以外を含む)の販売台数シェアは2020年の2.9%から急増し、2023年は21.7%を占めた。このうち中国ブランドに限った市場シェアも、2020年の2%から2023年は7.6%と急伸している(ACEAのファクトシート)。
(滝澤祥子)
(EU、中国)
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