取引所でのドルやユーロ取引停止後も為替レートは安定
(ロシア)
調査部欧州課
2024年06月21日
ロシアの金融機関を含む米国によるロシアへの追加制裁措置(2024年6月13日記事参照)を受け、ロシア国内ではルーブル為替レートへの悪影響が懸念されたが、2024年6月20日までの1週間の動きを見る限りでは、措置導入後は安定的に推移し、20日にはルーブル高に振れた。
米国の追加制裁措置を受け、モスクワ取引所(MOEX)は6月12日からドルおよびユーロの取引を停止し、ロシア中央銀行も同日、公示レートの設定にはMOEXのデータではなく、各銀行の個別取引データの集計を参考にすると発表した。
追加制裁後の最初の公示レート発表日となった6月14日(注)は、ドル、ユーロとも前日比で若干強含んだ。その後も大きく崩れることはなく、6月20日の公示レートは追加制裁発表前の6月12日を上回る水準となっている(添付資料図参照)。市中銀行や両替所では、一時は公示レートからの大幅な乖離や売り・買いレート間の差(スプレッド)の拡大が見られたが、それも急速に収斂(しゅうれん)している。
金融専門家は、ルーブルが強含みで推移する理由を次のように指摘する。Tバンク(旧ティンコフ銀行)の投資部門であるTインベスチツィイのソフィヤ・ドネツ主任エコノミストは「投資口座のドルやユーロの取引ができなくなることを恐れた個人投資家や金融機関が、ルーブルへの転換を急いだため」と見る(ロシア新聞6月18日)。投資会社フィナムのアレクサンドル・ポタビン・アナリストは「ルーブルのレートを左右する要因の1つである貿易収支の観点では、輸入の需要が大きくないためルーブルが強含みとなっている」と説明する(RBK 2024年6月19日)。
その一方で、今後の為替レートの見通しは必ずしも強含みが続くとは限らない、との指摘もある。大統領府付属ロシア国民経済・行政アカデミーのセルゲイ・ヘスタノフ准教授は、為替レートは原油価格により強く影響されることから、「秋にOPECプラスが減産枠を縮小するかがポイントになる」と指摘する(NGS.ルー6月18日)。
(注)6月13日は前日が祝日だったためレートの設定なし。
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