5月の米消費者物価指数は総合、コアともに上昇率が鈍化、総合は前月比で22カ月ぶりに横ばい

(米国)

ニューヨーク発

2024年06月13日

米国労働省が6月12日に発表した5月の消費者物価指数(CPI、総合)は前年同月比3.3%上昇(前月3.4%上昇)、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は3.4%上昇(前月3.6%上昇)と、上昇率はいずれも鈍化した。前月比でみると、CPIは横ばい(前月0.3%上昇)、コア指数は0.2%上昇(前月0.3%上昇)となり、CPIが横ばいだったのは22カ月ぶり、コアの伸びも2023年10月以来の低い水準だった(添付資料図1、表参照)。なお、市場予測はCPIが前年同月比3.4%上昇、前月比0.1%上昇、コア指数が前年同月比3.5%上昇、前月比0.3%上昇で、今回の結果は市場予測よりも鈍化の幅がわずかに大きかった。

品目別に前年同月比でみると、エネルギーは3.7%上昇(前月2.6%上昇)と引き続き上昇幅が拡大、このうちガソリンは2.2%上昇(前月1.2%上昇)だった。食料品は2.1%上昇(前月2.2%上昇)、外食は4.0%上昇(前月4.1%上昇)といずれも伸びが鈍化した。エネルギーと食料品を除いた財は1.7%下落(前月1.3%下落)と下落幅が拡大した。内訳では、中古車が9.3%下落(前月6.9%下落)、新車が0.8%下落(前月0.4%下落)と下落幅が拡大し、衣料品も0.8%上昇(前月1.3%上昇)と上昇幅が鈍化した。5月は小売事業者が大幅な値引きを行った。また、自動車に関しては、米国連邦準備制度理事会(FRB)の地区連銀経済報告(ベージュブック)で、メーカーなどが販売促進のためのインセンティブを提供している(2024年5月31日記事参照)とも報告されている。これらはいずれも、消費者がインフレや高金利などを理由として裁量的消費を抑制する中で、事業者が顧客を引き付ける観点から取り組まれているものであり、財部門におけるインフレ率の低下は消費の緩やかな減速(2024年6月4日記事参照)が継続していることを示唆している可能性がある。

エネルギーを除くサービスは前年同月比5.3%上昇と前月と変わらなかった。物価のうち3割のウエートを占める住居費は、5.4%上昇(前月5.5%上昇)と2カ月連続で伸びが鈍化した。内訳では、帰属家賃(注)が5.7%上昇(前月5.8%上昇)、賃料も5.3%上昇(5.4%上昇)とわずかに鈍化した。

住居費を除くサービス価格は、前年同月比5.0%上昇(前月4.9%上昇)と5カ月連続で上昇幅が拡大した。内訳をみると、医療サービスが3.1%上昇(前月2.7%上昇)と伸びが加速、輸送サービスは10.5%上昇(前月11.2%上昇)と前月よりも大きく鈍化したものの高水準にあるなど、金融引き締めが効きにくい分野は引き続き懸念点だ(添付資料図2参照)。また、レクリエーションサービスなど労働集約的なセクターでのサービス価格の上昇幅は引き続き低下しており、労働市場の緩やかな減速に伴って今後も低下が期待されるものの、5月の雇用統計では一部で強い指標も見られており(2024年6月10日記事参照)、なお注視が必要だ。

(注)自己が所有する住宅(持ち家住宅)に居住した場合、家賃の支払いは発生しないものの、通常の借家や借間と同様のサービスが生産され、消費されるものと仮定して、それを一般の市場価格で評価したもの。

(加藤翔一)

(米国)

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