バイデン米政権、300近いロシア関係の個人・事業体を金融制裁対象に指定

(米国、ロシア、ウクライナ、中国、香港)

調査部米州課

2024年05月02日

米国のバイデン政権は5月1日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの支援に関与するおよそ300の外国事業体を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。今回の制裁では、ロシアの軍事産業基盤や化学・生物兵器プログラム、それらに関する調達を支援する個人・事業体が主な対象となっている。

財務省外国資産管理局(OFAC)は約200の個人・事業体をSDNに指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。拠点をロシア以外に置く個人・事業体も多く指定されており、それらはアゼルバイジャン、ベルギー、中国(香港を含む)、スロバキア、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)にまたがっている。中でも、中国に拠点を置く事業体は22社となっており、分野としても無人航空機、センサー機器、通信機器、防衛装備品、化学品など広範にわたっている。4月末に中国を訪問したアントニー・ブリンケン国務長官は、会談した中国政府高官らに対して、中国によるロシアの軍事産業基盤への支援に懸念を示していた(2024年5月1日記事参照)。

国務省は80を超える個人・事業体をSDNに指定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。主に、ロシアのエネルギー、金属、鉱物の開発・輸出能力、制裁迂回行為、ロシアの戦争継続費確保に関与している者を対象とした。例えば、ロシア北極圏での液化天然ガス(LNG)開発事業「アークティックLNG2」に関与しているシンガポールと香港にそれぞれ拠点を置く船舶関連企業や、ロシアの石炭採掘企業、ロシア国営の原子力企業ロスアトムの関連子会社などが含まれている。SDNに指定された事業体・個人には、在米資産の凍結や、米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止を科す(注2)。

ジャネット・イエレン財務長官は、継続的な対ロ制裁と4月にウクライナ支援予算を含む法律が成立(2024年4月25日記事参照)したことを踏まえて、「われわれのウクライナへの支援と、ロシアの軍事能力への容赦ない制裁は、戦場においてウクライナに大きな優位性を与えている」とその成果を強調した。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDN指定を今回受けた事業体・個人の詳細はOFACのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。このほか、制裁対象の事業体・個人などについては、OFACのデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで検索可能。

(磯部真一)

(米国、ロシア、ウクライナ、中国、香港)

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