尹大統領、2年間の成果と今後3年の取り組み発表

(韓国)

ソウル発

2024年05月13日

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は5月9日、「就任2周年国民報告と記者会見」を行った。同報告では、就任から2年間の経済政策などの成果と反省を述べるとともに、今後3年間の新たな取り組みを発表した。主な内容は次のとおり。

(1)就任後2年間の国政運営

  • 市場経済と財政健全化の定着、民間主導の成長転換に集中してきた。
  • 米韓同盟は、核を基盤とする安全保障同盟に格上げし、韓国の防衛能力を画期的に高めることができた。
  • 労働市場改革と労使法治主義の確立により、労働争議が減少した。
  • 先端産業基盤を強化し、622兆ウォン(約68兆4,200億ウォン、1ウォン=約0.11円)規模の世界最大の「半導体メガクラスター」造成に着手した。
  • シンハンウル3、4基(原子力発電所)の建設再開など、原発のエコシステムを復元した。
  • 医学部の増員拡大を推進し、地域医療の支援体制を強化した。

(2)今後3年間の取り組み

  • 少子化克服に向け、出産休暇と育児休暇の活用を促進し、時差出退勤や勤務時間選択制などを制度化する。
  • 少子高齢化に備え、「少子化対応企画部」(仮称、「部」は日本の「省」に相当)を新設する。少子化対応企画部長官が社会副総理を務め、少子化を国家アジェンダとして管理する。
  • 貧困層の支援水準を引き上げ、貧困層の生活の安定を図る。
  • 小商工人(自営業者など小規模事業者)向けの政策資金の拡大や、金利負担の緩和策を講じる。

(3)その他

  • 2年間、急務だった国民の生活安定に力を入れたが、国民の期待に十分に応えられなかった。
  • 今後3年間は、国民の生活により密着し、現場中心で民心をとらえ、需要者中心で政策アジェンダを発掘し、積極的に実践していく。
  • 国会との協力が不可欠なため、与党・野党と頻繁に意思疎通をし、国民生活分野の協力を強化していく。

尹大統領の報告の後、国内外の記者による質疑応答が行われた。このうち、外交・経済分野での主な内容は次のとおり。

(1)外交分野

(問)日韓関係では徴用工問題が完全に解決できていないが、どのように対応する予定か。岸田総理への協力要請はあるのか。

(答)韓日関係で、歴史問題や一部の懸案について、両国国民の意見の相違が存在している。しかし、韓日関係は、未来世代のためにわれわれが何をするかを考えなければならない。難しい問題も多いが、韓日の未来、北朝鮮の核問題への対応、両国の経済協力、インド太平洋地域と国際社会での両国共同のアジェンダなどに対するリーダーシップを確保するために、努力しなければならない。多くの懸案と歴史問題が障害物になる可能性はあるが、しっかりした目標志向性を持ち、忍耐すべきことは忍耐して進まないといけない。岸田総理とは十分な信頼関係ができており、今後も協力していく。

(2)経済分野

(問)半導体産業の支援では、税制優遇よりは「現金性支援」(補助金)が必要との産業界の要請があるが、どう考えるか。

(答)韓国政府は「時間が補助金」という考えだ。半導体工場などの建設時の電力や工業用水といった基盤施設の整備がスピーディーに推進できるように規制を緩和する方針だ。税制優遇については、「大企業向けの減税」とする反対意見もあるが、半導体の競争力強化を目指し、推進していく方針だ。財政の余力が許す限り、韓国企業の国際競争力強化を最大限支援する考えだ。

(問)金融投資所得税(注)の行方は。

(答)金融投資所得税を廃止しないと、株式市場から多くの資金が流出する可能性があり、個人投資家が被害を受けると予想している。韓国は配当所得税も先進国に比べて高く、金融投資所得税まであると、投資しても残るものがなくなる。廃止に向けて国会に強力な協力を要請する予定だ。

(注)所得税の1つで、株式、ファンド、債券など、金融投資と関連した譲渡所得に課税をする制度。2025年から施行予定。

(李海昌、花輪夏海)

(韓国)

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