2023年のコバルト需要は初めて約20万トンに
(世界、アフリカ、コンゴ民主共和国、インドネシア、中国)
調査部中東アフリカ課
2024年05月28日
国際的なコバルトの研究機関「Cobalt Institute」は5月13日、コバルト市場関連の年報「Cobalt Market Report 2023」を発表した。それによると、コバルトの需要は2023年に初めて約20万トンに達した。同年のコバルト生産の国別シェアは、コンゴ民主共和国が全体の76%、インドネシアが7%、オーストラリアが2.2%、キューバが1.9%、フィリピンが1.6%だった。
コバルトの用途をみると、電気自動車(EV)用バッテリー向けが45%を占めた。世界的な脱炭素政策を背景に、EV販売は増加傾向にあり、コバルト市場の成長の要因となった。その他、携帯電話用やノートパソコン用のバッテリーなどの用途で利用されており、バッテリー以外の用途では、航空宇宙産業向けが9%を占めた。
報告書によると、中国のCMOC(洛陽欒川鉬業集団)では、特にコンゴ民主共和国のキサンフ鉱山でのコバルト生産が前年から3万トン以上の大幅な増加となり、2022年までトップだったスイスのグレンコア社を抜いて、初めてコバルト年間生産量でトップとなった。また、インドネシアではコバルト生産量が前年比でほぼ倍増となった。これらの増加により、2023年の世界のコバルトの余剰は約1万4,200トンとなり、前年の6,700トンから大幅に増加した。
2023年のコバルト需要は前年比10%増だったが、供給が前年比17%増え、供給が大幅に増えたことで、価格は下落した。2023年の価格は、アジアでは前年比約34%、欧州では同21%下落した。一方、コバルト市場では、2020年代半ばから後半にかけて需要が供給を上回り、価格を下支えするとの予測となっている。
なお、国際エネルギー機関(IEA)によると、コバルト需要は2030年には約34万トン(うち気候変動対策関連で約18万トン)にまで拡大する見込みだ(2024年5月28日記事参照)。
(井澤壌士)
(世界、アフリカ、コンゴ民主共和国、インドネシア、中国)
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