バイデン米大統領、イスラエルがラファに侵攻する場合、武器提供しない考えを表明

(米国、イスラエル)

ニューヨーク発

2024年05月10日

米国のジョー・バイデン大統領は5月8日、CNNとのインタビューの中で、イスラエルがガザ地区南部の都市ラファに侵攻する場合、武器を提供しないと言明した。発言は、米国メディアで従来よりも踏み込んだ発言と捉えられているほか、国内政治にも波紋を広げている。

インタビューで、バイデン大統領は「ガザでは、爆弾やその他の方法で人口集中地区を狙った結果、民間人が犠牲になった」との認識を示したうえで、「もし彼ら(イスラエル軍)がラファに入れば、ラファや他の都市に対処するため、これまでに使用されてきた武器は提供しない」「私はビビ(ベンヤミン・ネタニヤフ首相)と戦時内閣にはっきりと伝えた。もし彼らが人口集中地区を攻撃するのであれば、米国の支持は得られないだろう」と表明した。一方で、「われわれは、(イスラエルの防空システムである)アイアンドームと、最近中東から来た攻撃に対応する能力という点で、イスラエルの安全を確保し続けるつもりだ」とも述べ、米国がイスラエルの安全保障に引き続きコミットする姿勢を強調した。

武器提供停止の可能性に言及した大統領の発言を、米国メディアは一斉に報じた。インタビューを実施したCNNは「イスラエルの行動に応じて米国の兵器供給を条件付ける用意があるとの大統領の発表は、イスラエルとハマスとの7カ月に及ぶ紛争の転換点」(5月9日)と評価したほか、他の主要メディアも「イスラエルのガザ戦争開始以来、政権が援助条件を付した最も明確な内容」(米政治専門紙「ポリティコ」5月8日)、「イスラエルが7カ月前にガザでの軍事作戦を開始して以来、米国によるイスラエルへの軍事援助停止を警告した初めての発言」(「ワシントン・ポスト」紙5月9日)、「イスラエルのガザ戦争に対するこれまでで最も明確な公の非難」(「ウォールストリート・ジャーナル」紙5月8日)など、従来よりも踏み込んだ発言と捉えている。発言は国内政治にも波紋を広げており、イスラエル支援を盛り込んだ緊急予算法案成立に協力した共和党は、同盟国支援の約束違反などと反発しているほか、民主党も、発言を称賛するリベラル系議員と失望を表明するイスラエル寄りの議員で反応が割れているもようだ。

国内の大学や市街地では、イスラエルによるガザ地区での軍事行動を巡ってアラブ系や若者を中心に反イスラエルの抗議活動が続く。大統領は、同インタビューで抗議活動について問われ、「もちろん、メッセージは聞いている」と答えつつ、平和的な抗議は保護されるが、暴力が発生する場合は違法だとの従来の主張(2024年5月7日記事参照)を繰り返した。大統領は、5月7日に行われたホロコースト追悼式典における演説では、反ユダヤ主義高まりへの懸念を訴え、ユダヤ人コミュニティーに寄り添う姿勢を示していた(2024年5月8日記事参照)。外交、内政ともにイスラエルとの距離感が目下の大きな争点となっており、11月の大統領選挙を含む国政選挙に向けてバイデン政権がどのような着地点を探るのか注目される。

(米山洋)

(米国、イスラエル)

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