トルコ統一地方選挙で野党が躍進

(トルコ)

イスタンブール発

2024年04月03日

トルコで全国の市長を選出する統一地方選挙が3月31日に実施、即日開票された。同選挙は5年ごとに実施される。

最終的な選挙結果選挙結果はまだ確定されていないが、野党・共和人民党(CHP)は3大都市のイスタンブール、アンカラ、イズミールやブルサを含むマルマラ南部、デニズリなどエーゲ地方内陸部など主要経済都市をおさえた。全国81市のうち人口が75万人以上の大都市広域市30市では14市、81市全体では35市で勝利し、それぞれ改選前の11市、21市から大きく伸ばした。

与党・公正発展党(AKP)は、改選前の39市から24市にとどまり、支持基盤の内陸部や黒海でも得票率が減少した。南東部の震災地域でも票は伸びず、ハタイ市は辛勝したものの、前回50~60%を獲得していたアドゥヤマンやシャンルウルファで敗北した。与党・民族主義者行動党(MHP)は得票率を7.3%から5.0%に下げたが、8市で勝利した。

野党では、優良党(IYIP)は中部ネブシェヒルで勝利したが、候補を立てた多くの県で苦戦し、得票率は前回7.45%から3.8%へ下げた。また、2023年の選挙で初めて登場したイスラム系の新福祉党(YRP)は、与党AKPの票を切り崩すかたちで南東部、中部2市を獲得し存在感を示した。クルド系の人民平等民主党(DEM)は支持基盤の南東部を中心に10市で勝利した。

前回2019年の地方選挙(2019年6月25日記事参照)において、与党候補と接戦になり注目されていたイスタンブール大都市広域市では、現職のCHPエクレム・イマムオール氏の得票率が51.1%と前回の48.8%から増やす一方、AKPムラト・クルム氏は前回与党候補者の48.6%から39.6%に下げた。1,590万の人口を抱えるイスタンブールは、政局全体への影響も大きく、2028年5月までに行われる大統領・議会選挙を視野に入れた影響が注目される。

今回の選挙結果は、高金利や物価高騰を受けた厳しい市民生活が反映されたものといえる。トルコにおける最低賃金(2024年1月10日記事参照)は月額1万7,002リラ(約8万円、1リラ=約4.7円)で、2024年1月に改定されたものの、高インフレの中で目減りしている状況だ。また、年金受給者からの反発も大きかったとみられる。最低年金受給は月額1万1,566リラと、1月に約49%の増額改定がされているが、物価上昇による直撃を受けるかたちとなっていた。現政権は、インフレと経常赤字との闘いを最優先課題としており、シムシェキ財務相は選挙後、金融引き締めを継続していくことを明らかにしている。

なお、投票率は78.1%となり、前回2019年の84.7%からは下がった。トルコにおける国政選挙の投票率は過去10年83~88%と高いのが特徴で、前回2019年選挙における若者(18~34歳)の投票率は男性約75%、女性約79%となっていた。

(佐野充明、ディラ・イェネル)

(トルコ)

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