2024年の中東の輸出量予測を前年比3.5%増、輸入量を1.2%増に下方修正、WTO発表

(中東、世界)

調査部中東アフリカ課

2024年04月15日

WTOは4月10日、世界貿易見通しを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし(2024年4月12日記事参照)、2024年の中東(注1)における輸出量を前年比3.5%増、輸入量を同1.2%増と予測した。前回の10月予測から輸出量は0.3ポイント減、輸入量は3.4ポイント減の下方修正となった。2024年の世界貿易量(輸出入平均)は2.6%増と予測している。

2023年の中東の貿易量については、輸出量を前年比1.6%減、輸入量を同9.8%増としている。2023年の世界貿易量(輸出入平均)は1.2%減となった。

WTOは2023年の世界貿易量減少の背景について、エネルギー価格の高騰とインフレにより工業製品需要の伸びが圧迫されたことをあげている。他方で、中東産油国に代表されるような大規模なエネルギー資源輸出国は、エネルギー価格が歴史的な水準で高止まりしたことを受け、堅調な輸出収入によって輸入量が維持されたとしている。

2024年の見通しについては、インフレ圧力が緩和されることによって、工業製品の消費が増加し、貿易財の需要が回復すると予想している。今後のリスク要因としては、地政学的緊張や政策の不確実性を指摘した。なお、イスラエルとハマスの軍事衝突に起因する、フーシ派などによる紅海での船舶攻撃の経済的影響は、現時点では比較的限られているとしている。

また、2023年の中東におけるデジタル配信サービス(注2)の輸出額は1,393億4,500万ドルで、前年比6.0%増となり、世界平均の伸び(9.0%増)を下回った。分野別の内訳は、コンピュータ(26.8%)、保険・年金(24.3%)、情報通信(8.3%)、金融(5.0%)、知的財産(3.2%)、個人・文化・レクリエーション(2.9%)、情報(0.4%)、その他ビジネス(29.1%)となっている。世界平均と比較して、保険・年金(世界平均5.2%)の割合が高く、金融(同16.0%)や知的財産(同10.9%)の割合は低い構成となった。

(注1)WTOによる定義では、バーレーン、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェート、レバノン、オマーン、パレスチナ、カタール、サウジアラビア、シリア、アラブ首長国連邦(UAE)、イエメンの14の国・地域を含む。

(注2)「デジタル配信」には、インターネット、アプリケーション、Eメール、音声・ビデオ通話を通じ国境を越えて取引されるサービスや、オンラインゲーム、音楽、映像ストリーミング、リモート学習などのデジタルプラットフォームを通じて越境取引が行われるサービスを含む。

(久保田夏帆)

(中東、世界)

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