米USTRが通商関連気候変動対策に関する声明をWTOへ提出

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月08日

米国通商代表部(USTR)は4月4日、「グリーントランジションの機会と課題の理解-通商関連気候対策の一貫性と相互運用性-」と題する声明をWTOに提出したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。通商政策が気候変動対策を支援し、補完できる、実践的かつ建設的な方法について、WTO加盟国間での議論を促進することが目的だとしている。

WTOに提出された声明によると、加盟国は既に、複数のWTOの委員会を通じて、1,000を超える通商に関連する気候変動緩和策および適応策、数千以上の気候変動と環境保護のための規制をWTOに通告している。そこで米国は、WTOでの議論は、これらの異なる政策がどのように互いに補完し合えるかに焦点を当て、作業の重複を避けるべきだと提案している。具体的な提案は次のとおりだ。

  • 既に提出されている資料などを基に、各国が取っている、または経験している、通商関連気候変動対策(TrCM)の相互運用性と、温室効果ガス(GHG)排出量を算出するための具体的なデータと方法論に絞った理解の促進
  • 国際規格間の互換性を高める方法など、WTOの委員会でのテーマ別討議と委員会横断的作業
  • TrCMの履行に焦点を当てたマルチステークホルダーイベント
  • WTO加盟国が中心となってまとめる報告書の作成

政治専門紙「ポリティコ」(4月4日)によると、今回提出された声明では、WTO加盟国の理解を深めることを意図しており、米国はインフレ削減法(IRA)に基づくクリーンエネルギー補助金やEU炭素国境調整メカニズム(CBAM)など(注)、TrCMに関する明確なルールを確立する協定の交渉は求めてはいない。また同紙は、中国がIRAに関してWTOに基づく紛争解決手続きを開始している中、米国がこのような声明を提出すのは「異例中の異例」としている。中国は3月26日に、IRAに基づく電気自動車(EV)などクリーンビークルに対する税額控除措置について協議を要請している(2024年4月1日記事参照)。

(注)CBAMについては、ジェトロの解説ページ参照。

(赤平大寿)

(米国)

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