シンガポールのピクシス社開発のEV船、2025年までの日本進出目指す

(シンガポール、日本)

シンガポール発

2024年04月02日

シンガポールの海運系スタートアップ、ピクシス・マリタイム(Pyxis Maritime)は327日、同社が開発した環境に優しい電気推進船(EV船)「Xトロン」を発表した。同社を創業したトミー・プン最高経営責任者(CEO)は330日、ジェトロとの書面インタビューで、「日本市場へ2025年までに進出したい」との意欲を示した。

ピクシスは2022年創業のスタートアップだ。同社が開発した「Xトロン」は、定員12人と船員2人の計14人乗りの小型EV舶で、同社のEV船シリーズ「ピクシス・ワン」の第1号船となる。同船舶は、シンガポール港湾に停泊中の船舶と本土との間で船員を運ぶために設計された。アルミニウム製の双胴船で、船舶IoT(モノのインターネット)システムを搭載する。プンCEOによると、既存のディーゼル船と比べると、運航時の1時間当たりの二酸化炭素(CO2)を最大120キロ削減できるという。

写真 ピクシスが開発したEV船「Xトロン」(3月27日、ジェトロ撮影)

ピクシスが開発したEV船「Xトロン」(3月27日、ジェトロ撮影)

同CEOは日本を進出先とする理由として、「東京や名古屋、大阪、神戸など有数の港が国土全体に数多く存在する世界でも大きな島国だ」と指摘した。その上で「日本は環境分野で先進的な取り組みを続けており、多くの企業が国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組んでいる」と述べた。ピクシスは2023年11月1日、商船三井(本社:東京都港区)と、EV船の事業化に向けた共同研究・開発(R&D)と建造、日本でのEV船導入拡大に向けたマーケティングに関する覚書を締結した。同CEOは「グリーンな海運の実現のために、日本の海運エコシステムとともに、EV船の開発と運航で協力していきたい」と抱負を述べた。

高等技術専門学校と共同で、EV船の運航技術を学ぶ学部コースを設計

同CEOは「より持続可能な海運業界のためにディーゼル燃料からEVへ転換するには、人材開発が必要だ」と強調した。「電気光学やソフトウエア開発、電力インフラ・エンジニアリングなど非海運業界からの人材に加え、既存の海運業界の人材の再訓練も必要となる」と述べた。同社は現在、地元の高等技術専門学校(ITE)と海運業界関係者と共同で、EV船運航に必要な電気光学技術を学ぶコースの設計に取り組んでいる。

(本田智津絵)

(シンガポール、日本)

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