台湾東部地震、マレーシア半導体産業への影響は限定的との見方

(マレーシア、台湾)

クアラルンプール発

2024年04月05日

4月3日に台湾東部で発生した地震は、マレーシアの半導体産業に直ちには大きな影響を及ぼさないとみられている。半導体はマレーシアの主力産業のため、特に半導体ファウンドリー(受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の動向には関心が高まっていた。同社の一時操業停止を受け、マレーシア半導体産業協会(MSIA、注)のウォン・シューハイ会長は「在庫を十分に確保しているため」として、国内産業への影響が軽微にとどまる理由を説明した(4月4日付「エッジ」)。「後から影響が出る可能性もあるが、その度合いはTSMCの混乱がどの程度深刻かによる」と付け加えた。自動化技術を手掛けるグレーテック・テクノロジーの社外取締役も務めるウォン氏は、同社としてはTSMCからの供給には依存していないため、今後も操業停止の影響は受けないとの見通しを示した。

4月5日にジェトロが当地の台湾貿易センター(TAITRA)に確認したところ、現時点では、地震の影響によるサプライチェーン寸断にかかる在マレーシア台湾企業からの照会やコメントなどは特に入っていないという。

一方、報道によると、半導体検査機器の製造販売を手掛けるQESグループのチュー・ネウェン社長は、地震の影響を評価するのは時期尚早としつつも、世界最大手のファウンドリーのTSMCの存在感を勘案すると、操業への支障が2週間を超える場合には、半導体産業にも大きな影響が及ぶ可能性があるとの見解を示した。特に「7ナノメートル以下のハイエンドウエハーチップのほとんどがTSMC製」と指摘した。

なお、マレーシアの半導体産業で、例えば、バックエンド製造では日月光半導体製造(ASE)、電子機器受託製造サービス(EMS)ではフォックスコンといった台湾企業が拠点を置いている(ジェトロ「マレーシアの電気・電子産業-半導体産業を中心に-」参照)。台湾によるマレーシアへの直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は、2023年には前年比3.7倍の15億リンギ(約480億円、1リンギ=約32円)と、統計がさかのぼれる2008年以降では過去最高額を記録し、投資元としては第7位だった。マレーシア投資開発庁(MIDA)が発表する製造業の認可投資額でも、2023年は前年比5.1倍の29億リンギを計上。同年中はプリント基板メーカー精成科技(GBM)によるペナン州での新工場設立(投資額約10億リンギ)や、EMSを行うP.I.E.インダストリアルによる投資(約6,000万リンギ)、半導体生産設備部品や自動車部品を製造する倉佑実業による新工場建設、サーバー大手緯穎科技によるジョホール州での新工場稼働が発表されるなど、電気電子産業を中心とした投資が活発化している。

(注)MSIAは2021年1月に設立された半導体関連産業団体。2023年12月のMSIAへのヒアリングによると、同時点で約260社が加盟し、うち半数は在ペナン州の企業。在マレーシア半導体関連企業の6~7割は多国籍企業と推定される。

(吾郷伊都子)

(マレーシア、台湾)

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