投資環境悪化も、先端分野スタートアップへの投資件数は堅調

(シンガポール)

シンガポール発

2024年04月10日

シンガポール企業庁(エンタープライズシンガポール)は4月3日、同国を本社とするスタートアップが2023年に調達した投資総額は61億米ドルで、投資総件数は522件だったとの調査結果を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。世界的な資金調達の低迷に伴い、投資額は前年比44.7%減少し、件数も19.8%減となった。このうち、先端技術のディープテック分野(注1)のスタートアップへの投資総額は18.2%減だったが、同分野の投資件数は、2022年の121件から2023年に159件へと増加した(添付資料図参照)。

同調査は、企業庁の依頼に基づきテック専門オンライン誌「ディールストリートアジア」が実施した(注2)。シンガポールのスタートアップへの投資を部門別にみると、ヘルステックへの投資件数が2022年の21件から、2023年の51件と2倍以上に増加した。環境テックへの投資件数も2022年の10件から、2023年の26件へと増加した。

また、2023年のシンガポールのスタートアップへの投資総額と投資件数がともに、ASEAN主要6カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の中で最大だった。同主要6カ国で2023年に最も資金を調達した上位20社のうち、約3分の2に相当する13社がシンガポールのスタートアップだった。

企業庁主催のディープテック分野のピッチコンテスト、公募を開始

企業庁は同日、同庁が主催するディープテック分野スタートアップのピッチコンテスト「スリングショット」の公募開始を発表した(締切日:7月1日)。2024年の公募のテーマは、「製造、貿易、コネクティビティ」「ヘルスケア、バイオメディカル」「環境、エネルギー」「先端デジタル技術」「消費者生成メディア(注3)やモノ・サービス」の5テーマだ。優勝賞金は15万米ドルのほか、オフィスの1年半の無償貸与などが提供される。2023年の同コンテストでは、日本発のスタートアップが初めて優勝した(2023年12月1日記事参照)。スリングショットの詳細は、同コンテストのサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(注1)ディープテックとは、量子コンピュータやバイオテクノロジー、細胞培養肉や自動運転など、社会や産業界に革新的な変化をもたらす可能性のある先端科学技術分野の技術を指す。

(注2)同調査「2023年シンガポールのベンチャー資金概況」の詳細は、企業庁のサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注3)掲示板や口コミサイトなど、一般ユーザーが参加してコンテンツができていくメディアのこと。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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