米マイクロソフト、日本のAI・クラウド基盤強化に29億ドル投資、AI分野での日米協力進む
(米国、日本)
ニューヨーク発
2024年04月16日
米国マイクロソフトのブラッド・スミス副会長兼プレジデントは4月9日、米国公式訪問の岸田文雄首相との面談の機会を捉え、今後2年間で29億ドルを日本に投資し、人工知能(AI)およびクラウド基盤を強化すると発表した。また同発表には、今後3年間で300万人以上のAI人材の育成を目標としたデジタル技術プログラムの拡大、同社にとって日本初となる研究拠点の新設、サイバーセキュリティー分野における日本政府との連携強化も盛り込まれた。主な内容は次のとおり。
- 日本のAIおよびクラウド基盤の強化:日本への投資額は、日本とマイクロソフトの歴史上最大規模となる。今回の投資により、マイクロソフトはクラウド基盤の処理能力を大幅に向上し、AIのワークロード(仕事量)高速化に必要不可欠な最先端の画像処理半導体(GPU)を含む、より高度な演算資源を提供する。
- 日本初拠点を東京に開設:マイクロソフトの研究部門であるマイクロソフト・リサーチ・アジアの新研究施設では、日本の社会経済的な優先課題の解決に寄与する分野に焦点を当てる。また、さらなる研究連携の加速のため、今後5年間で東京大学や慶応義塾大学、カーネギーメロン大学とのAI研究に対し、それぞれ1,000万ドルの資金を提供する。
- サイバーセキュリティー分野における日本政府との連携強化:日本の内閣官房と協力し、国家安全保障戦略に沿って政府・企業・社会のサイバーセキュリティーの強靭(きょうじん)性を強化していく。情報共有、人材育成、テクノロジーソリューションなどの分野に重点を置き、マイクロソフトの専門知識、高度なクラウドやAIを活用したセキュリティサービスを提供する。
AI分野での日米協力は、4月10日の日米首脳会談の共同声明でもイノベーション・経済安全保障の分野における重要なテーマの1つとして挙げられている(2024年4月11日記事参照)。AI分野に関連する部分では、(1)日本の理化学研究所と米国のアルゴンヌ国立研究所間の「AI for Science(AIを活用した科学研究の革新)」に関する協力を歓迎すること、(2)エヌビディア、アーム、アマゾン、マイクロソフト、日本企業連合からの資金提供を通じ、米国シアトルのワシントン大学と筑波大学間、米国ピッツバーグのカーネギーメロン大学と慶応義塾大学間で、1億1,000万ドルのAI研究パートナーシップが成立したことを称賛すること、(3)2023年のG7広島サミットで立ち上げられた「広島AIプロセス」をさらに前進させ、両国のAIセーフティ・インスティテュート間の連携を強化することにコミットしていること、などが盛り込まれている。
今回の日米首脳会談に関連した動きのほかにも、AI分野における日本への投資が相次いでいる。アマゾンのクラウド部門であるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は2024年1月、2027年までに日本のクラウドインフラに2兆2,600億円を投資すると発表した。また、対話型AI「ChatGPT」などの開発を手掛けるオープンAIは、2024年4月にアジア初の拠点を東京に開設すると報じられている(ブルームバーグ2024年4月1日)。
(樫葉さくら)
(米国、日本)
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