3月の米小売売上高は前月比0.7%増、休暇の前倒しや給与の伸びなどが要因

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月16日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(4月15日付)によると、3月の米国の小売売上高(季節調整値)は前月比0.7%増の7,096億ドル(添付資料表参照)で、2カ月連続の増加となり、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.4%増)を上回った。なお、1月の売上高は前月比1.1%減から0.9%減に、2月は同0.6%増(速報値、2024年3月18日記事参照)から0.9%増にそれぞれ上方修正された。

無店舗小売り、ガソリンスタンド、総合小売りなどが押し上げ要因に

業種別にみると、無店舗小売りが前月比2.7%増の1,230億ドル(寄与度:プラス0.46ポイント)と全体を最も押し上げた。次いで、ガソリン価格上昇(2024年4月11日記事参照)の影響を受けたガソリンスタンドが2.1%増の546億ドル(プラス0.16ポイント)、総合小売りが1.1%増の752億ドル(プラス0.11ポイント)と増加に寄与した。一方、自動車・同部品は0.7%減の1,341億ドル(マイナス0.14ポイント)と減少した。

今回の結果を受け、全米小売業協会(NRF)のジャック・クラインヘンズ・チーフエコノミストは「3月の商務省の統計は、インフレ圧力にもかかわらず、個人消費が底堅く推移し、消費者の強靭性を裏付けている」「売り上げはまちまちだったが、イースター休暇が例年より早かったことや、2023年の税金還付額がやや多かったこと、過去3カ月間の給与の伸びが強かったことなど、幾つかの要因が小売売上高を支えた」と述べた。

一方、米小売り各社の決算発表では、消費者が高額な商品を買い控えている動きが報告されている(2024年2月27日記事参照)。また、フィラデルフィア連銀の報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(4月10日)によると、30日以上および60日以上のクレジットカード延滞率は、2023年第4四半期(10~12月)に過去最高を記録した。加えて、2月の可処分所得は実質ベースで前月比0.1%減少と、インフレや金利上昇が貯蓄や消費に影響を及ぼしていることを示唆している(2024年4月4日記事参照)。さらには、3月の消費者物価指数(CPI)の上昇率が2カ月連続上昇の前年同月比3.5%となり、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ開始時期の予想を後ろ倒しにしたとの市場予測も現れている(2024年4月11日記事参照)。このように、消費を取り巻く環境には懸念すべき点もあり、個人消費の底堅さには不透明感が残る。

消費者マインドには評価が交錯しているもようだ。民間調査会社コンファレンスボードが3月26日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした3月の消費者信頼感指数は104.7と、2月の104.8からほぼ変わらなかった(添付資料図参照)。内訳をみると、雇用情勢の強さ(2024年4月5日記事参照)を反映し、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は151.0(2月:147.6)と3.4ポイント増加した。他方で、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は73.8(2月:76.3)と2.5ポイント減少し、2023年10月(72.7)以来の低水準となった。同社チーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏が「消費者は過去数カ月間と比較して、米国の政治環境に対するより強い懸念を示した」と指摘したように、特に大統領選を巡る先行きの不透明感が消費者マインドへの押し下げ圧力となっているようだ。

(樫葉さくら)

(米国)

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