新たなASEAN経済共同体ブループリント、6つの戦略目標を策定へ

(ASEAN、タイ、ラオス)

バンコク発

2024年04月04日

タイ商務省貿易交渉局(DTN)は2月28日、ラオスで2月19~21日に開催された第45回ASEAN経済統合に関するハイレベル・タスクフォース(HLTF-EI)の結果概要外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同会合では、今後の経済統合の方向性を示す、新たなASEAN経済共同体(AEC)ブループリントについて議論が行われた。現行のAECブループリントの計画は2016~2025年となっている(2021年5月13日記事参照)。今後、初期草案が2024年5月に開催予定の「ASEAN共同体ビジョン2045」策定を進めるハイレベル・タスクフォース(HLTF-ACV)に提出される見通しだ。

新たなAECブループリントは、AECの20年間(2026~2045年)の長期戦略を定める。行動計画は5年ごとのフェーズに分けることで、将来的な貿易環境の変化などに伴い、機動的に改定できるようになる。ジェトロが2024年4月2日にDTNに聞いたところ、AECブループリントでは次の6つの戦略的目標が構想されているという。

  1. シームレスにつながった単一市場と生産拠点:域内の物品・サービス貿易および金融統合の強化、ビジネスや人々の移動の円滑化
  2. デジタル経済とイノベーション:デジタル・トランスフォーメーションの加速、高度なイノベーション・エコシステムの形成、分野別の担当機関(セクトラルボディ)の機能強化(知的財産、観光業、運輸・交通、中小零細企業)
  3. グリーン経済とサステナビリティ:グリーン・バリューチェーンの域内統合の加速、地域での循環型経済のサプライチェーンの促進、グリーン・インフラと市場の連結、持続可能な海洋経済やサステナブル投資の奨励・拡大
  4. インクルーシブで公正な開発:開発格差の縮小、産学官および市民社会とのパートナーシップ推進、サービスが十分に受けられない/阻害された地域の社会参画促進
  5. 強靭(きょうじん)さを増すASEAN:サプライチェーンの安定性の確保、強靭なエネルギーとインフラの構築、食糧安全保障や金融安定性の確保、将来的にも活用されるASEANのビジネスや人材の担保
  6. グローバル・コミュニティにおいて積極的な役割を果たすASEAN:域外パートナーとの協力の強化、グローバル・バリューチェーンの高度化

上記の戦略的目標に沿って、AECの下に設置されている各分野別機関(セクトラルボディ)は作業計画・活動の策定を指示されている。

新たなブループリントの策定にあたっては、域内のさまざまなセクターからの提案や意見を受け付ける機会を設けているほか、経済専門家やASEAN議員会議(AIPA)との議論を通じて、重要課題に対する行動計画が盛り込まれる見込みだ。具体的な課題としては、さらなる貿易円滑化のための規則や規制の調和、ASEAN域内の労働者移動の自由化、高齢化社会への準備、ASEAN域内貿易の促進に向けた中間層の増大(所得向上による潜在的消費者の拡大)、高度なイノベーションと技術の開発、新たな貿易パートナーの開拓、学術界/企業/市民社会/公的部門との緊密な協力関係の拡大などが挙げられている。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(ASEAN、タイ、ラオス)

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