米エネルギー省、燃費基準でEVの石油等価係数を見直し

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月28日

米国エネルギー省(DOE)は3月19日、電気自動車(EV)の電力量消費率(電費)をガソリン車の燃費に換算するために使用する石油等価係数(PEF)の値を改定する最終規則を発表したPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。官報に掲載された日から75日後に有効となる。

PEFは、環境保護庁(EPA)が自動車メーカーによる企業平均燃費(CAFE)基準の順守状況を計算する目的で、DOEが策定するもの。現行規則のPEFは、1ガロン(約3.8リットル)当たり8万2,049ワット時(Wh)と設定しているが、今回の最終規則に先立ち、DOEが2023年4月に発表した規則案では、2027年モデル以降の値を大幅に削減し、2031年モデルまで1ガロン当たり2万3,160 Whにするよう提案していた。最終規則では、2027年モデル以降、段階的に低減するよう改定したが、2030年モデルの値は規則案と同水準の2万8,996Whにまで引き下げた。最終規則を適用すると、例えば、2022年モデルのフォードのバッテリー式EV(BEV)の「F150 ライトニング」の燃費換算値が1ガロン当たり237.7マイル(MPGe、1マイル=約1.6キロ)だが、同じ性能だと仮定した場合、2030年モデル時点の評価は83.2MPGeまで悪化することになる(政治専門紙「ポリティコ」3月19日)。自動車メーカーはCAFE基準を満たすため、より多くのEVを販売するか、ガソリン車の効率を高める必要がある。

今回の改定には、天然資源防衛評議会(NRDC)などの環境保護団体が「現行規制が時代遅れで、電費を大幅に過大評価している」とし、PEF値を引き下げるよう訴えを起こしたことなどが背景にある。電費を過大評価することで、より少ないEVでCAFE基準を達成してしまい、実態以上に燃費が改善したように見えることになると主張していた。一方、主要自動車メーカーを代表する自動車イノベーション協会は「PEFの改定はバッテリー式EVの生産を逆に阻害し、温室効果ガス(GHG)とCAFEの規則の調整をさらに誤ることになり、製造業者がたとえEPAのより厳格な排出基準を満たしていても、CAFEの民事罰金として数十億ドルを支払うことになる可能性がある」と反対の意を表明している。

(大原典子)

(米国)

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