米下院共和党議員団、中国港湾クレーン企業に質問状を送付、サイバーセキュリティーを懸念

(米国、中国)

ニューヨーク発

2024年03月12日

米国連邦議会下院の共和党議員団(注1)は3月8日、中国の港湾荷役機械大手の上海振華重工(ZPMC)に対し、米国港湾で稼働する同社製クレーンのセキュリティー上の懸念に関して質問状を送付したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。質問状PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は2月29日付で送付され、ZPMCに3月14日までに回答を求めている。

下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」の発表によると、同委員会と下院国土安全保障委員会による合同調査の過程で、米国港湾で稼働するZPMC製の船舶対陸上(STS)クレーン部品や、STSクレーンのファイアウォールやネットワーク機器を収容するサーバー室から、米国港湾とZPMCとの契約に含まれていない不審な通信端末が発見された。これを踏まえ同委員会は、これら通信端末が中国による米国港湾のSTSクレーンの改造や誤動作またはサイバースパイ活動を行えるようにし、米国港湾という重要インフラを危機的な状況にさらすことに深刻な懸念を抱いているとした。書簡ではこうした懸念を踏まえて、ZPMCに対して、米国の外交政策および国家安全保障上の利益に反する活動に関与する、または関与する可能性のある企業や中国共産党との連絡に関する情報を提供するよう要求している(注2)。

また、中国特別委員会は、ZPMCが中国政府の大規模な補助金を受けて、米国港湾の契約入札において極端に低い価格を提示し、市場で支配的な地位を得ていると不公正な貿易慣行を指摘している。ZPMCによると、同社の港湾荷役機械は世界の港湾の約7割にあたる100カ国・地域の港湾300カ所に設置されており、米国国土安全保障省(DHS)所管の沿岸警備隊(USCG)は、米国の港湾クレーンの約8割は中国製だとしている。

なお、バイデン政権も、国内の港湾におけるサイバーセキュリティー強化に動いており、今後5年間で200億ドル以上を投資し、港湾用クレーンの国内製造能力を信頼できるパートナーと構築していくことなどを発表している(2024年2月22日記事参照)。

(注1)中国特別委員会のマイク・ギャラガー委員長(ウィスコンシン州)、ダスティ・ジョンソン議員(サウスダコタ州)、ミシェル・スティール議員(カリフォルニア州)、国土安全保障委員会のマーク・グリーン委員長(テネシー州)、運輸・海上安全保障小委員会のカルロス・ヒメネス委員長(フロリダ州)、テロ対策・法執行・情報小委員会のオーガスト・フルーガー委員長(テキサス州)が書簡に署名した。

(注2)今回の質問状に先立って、国土安全保障委員会は2023年4月にDHSに対して外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます米国港湾で使用されるZPMCのSTSクレーンについて、2023年7月にスイスの重工業メーカーABBに対して外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますZPMCとの関係について、それぞれ質問状を送付している。

(葛西泰介)

(米国、中国)

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