炭素管理戦略の骨子発表、CCS・CCU実施に向け前進

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2024年03月08日

ドイツ連邦経済・気候保護省は2月26日、「炭素管理戦略」の骨子および同戦略に基づく「二酸化炭素(CO2)貯蔵法(KSpG)」改正の草案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は記者会見で、「CO2回収・貯留(CCS)なしでは気候関連の目標を達成することができない」とコメント。CCSや回収・利用(CCU)の技術は、2045年の気候中立〔温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ〕達成などの気候保護に関する目標の達成やドイツの産業立国としての立地競争力の維持のため必要不可欠だとの認識を示した。同戦略とCO2貯蔵法改正草案は、今後、各州や関係団体との協議を経て閣議に提出される予定。

「炭素管理戦略」の骨子では、GHG排出量が多くかつ排出削減が難しい産業部門でのCCSやCCUの活用の必要性を認め、活用にあたっての障壁を取り除くとしており、政府による資金提供を行うことも示している。

現行のCO2貯蔵法(2012年施行、2023年4月25日記事参照)では、ドイツ国内でのCCSの実施は研究・試験目的の貯蔵に限り認められ、かつ実施に必要な許可の申請期間も既に終了している。今回のCO2貯蔵法改正草案は、ドイツの排他的経済水域におけるCO2の海洋での貯蔵や、CO2輸送のためのパイプラインの敷設を可能とする。一方、政権内での反対も根強いこともあり、石炭火力発電へのCCSの適用は対象外だ。また、陸上での貯蔵も引き続き対象外とされている。

エネルギー会社などで組織する産業団体である連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)は、2024年2月26日付の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「炭素管理戦略」の骨子は気候中立に向けた重要な一歩だとした。また、陸上でのCO2貯蔵に対しては反対の立場であることを表明し、今回の草案でも海洋での貯蔵のみとされている点を評価した。また、ドイツ機械工業連盟(VDMA)も同日付の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、今回の戦略の骨子を評価し、炭素管理技術は、ドイツのGHG排出量の多い産業部門の競争力の維持や事業の存続にとっても必要だとした。

(作山直樹)

(ドイツ)

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