ウクライナが「国際戦争支援企業」リスト閉鎖の方向

(ウクライナ)

ワルシャワ発

2024年03月29日

ウクライナ内閣官房広報局は3月19日、閣僚会議(内閣)の拡大会合が開催され、国家汚職防止庁(NACP)のウェブサイトで公開している「国際戦争支援企業」リストを閉鎖する方針であることを発表した。

この会合には国家安全保障・国防会議(NSDC)のオレクシー・ダニロフ書記、保安庁のワシーリ・マリュク長官、アンドリー・コスチン検事総長、NACPのビクトル・パブルシチク長官が出席したほか、イタリア、日本、オーストリア、フランス、ハンガリー、トルコ、米国、ベルギー、フィンランド、ギリシャ、英国、カナダ、ドイツ、中国、EUの大使または大使館の代表者も出席した。

会合では、「国際戦争支援企業」リストに関する制度的枠組みの欠如について、外国政府関係者から多数の訴えや、リストの存在が各国のロシア対抗措置の決定に悪影響を及ぼすことを懸念する声がウクライナ外務省に寄せられていることが報告された。法務省の代表者は、立法レベルでの調整なしに、このようなリストを公開することは認められないと指摘した。

議論の結果、会合の出席者は、以下を含む複数の提案について同意した。

  • 国際戦争支援企業リストの対象者への制裁適用根拠の決定や、国家安全保障・国防会議の会合に向けた提案の作成などを含む国家制裁政策の実施のために、NACPの国際戦争支援企業リストに関する情報を省庁間作業部会に伝達する必要性について。
  • NACPの「国際戦争支援企業」ページを国家安全保障・国防会議の「国家制裁登録簿」(注)のウェブサイトへのリダイレクトページとすること。

NACPは、ロシア事業を継続し、税金などを通じて軍事侵攻を支援しているとみなしたグローバル企業を「国際戦争支援企業」としてサイト上で公表しており、3月22日時点では49社を掲載していた。国別では中国企業が14社とトップを占め、米国企業9社、ドイツとフランス企業がそれぞれ4社と続く。日本たばこ産業(JT)の子会社JTインターナショナルも、本社のあるスイス企業としてリストに掲載されており、ロシアでの事業状況のほか、経営陣の氏名や顔写真が公表されていた。

この「国際戦争支援企業」リストについては、以前からハンガリー、オーストリア、中国などの批判を受けており、2023年にはハンガリーのOTP銀行やオーストリアのライファイゼン銀行などがリストから削除または「停止」ステータスに移行されていた。

(注)「国家制裁登録簿」はウクライナ国家安全保障・国防会議事務局が管理するもので、2024年2月にサービスの提供を開始した。登録簿のサイトから氏名や会社名で検索することで、誰でも簡単に制裁の対象とみなされる1万7,000以上の個人および法人の詳細情報を閲覧することができる。

(柴田哲男、坂口良平、柴田紗英)

(ウクライナ)

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