英政府、女性の教育とキャリア、復職と保健支援を表明

(英国)

ロンドン発

2024年03月25日

英国のリシ・スナク首相は3月8日の国際女性デーに合わせて声明を発表。就任以降、科学・技術・工学・数学(STEM)キャリアへの支援による女性への世界基準の教育の保障や、過去最大の育児補助の拡大による選択肢の拡充、女性の保健戦略とファーマシーファースト(注1)の立ち上げによる女性へのケアの迅速な提供を行ってきたと述べた。

イングランドでは、2009年から2020年までに女性のSTEM科目のAレベル(英国の高等教育への科目ごとの入学資格)履修率は30%増加。大学のSTEM分野に進学した女性は、英国全体で2011年から2020年までに50.1%増加した。その一方で、2020年のSTEM分野に関わる雇用に占める女性の割合は29.4%だった。

政府は親の復職を支援、保健分野の優先事項も発表

政府は3月6日に発表した予算(2024年3月8日記事参照)で、チャイルドベネフィットと呼ばれる就学前児童の養育補助の給付を非課税で受けることができる収入上限について、現行の5万ポンド(約955万円、1ポンド=約191円)から6万ポンドに引き上げることを発表。また現在、就業中の親に対して3、4歳児を対象に週30時間の無料保育施設利用を補助している。2024年4月以降、2歳児を対象として週15時間、2024年9月以降9カ月以上の子供を対象として週15時間、無料の保育施設利用の補助を拡大することが決定している。こうした取り組みを通じ、復職支援につなげる考えだ。

また、政府は2023年3月に更年期障害雇用チャンピオンとして、スイスの人材サービス企業アデコのヘレン・トムリンソン氏を任命。同氏は担当相と緊密に連携して活動する役割を担い、雇用主に対し、更年期障害を経験している女性を支援するための方針策定を求める。政府によると、女性の4人に1人は更年期障害の症状を理由に離職を検討したことがあるとされているが、現在、英国で更年期障害支援の方針を持つ企業は全体の4分の1に満たない。

英国のビクトリア・アトキンス保健・ソーシャルケア相は2024年1月、イングランドの女性の保健戦略について、2024年の優先事項を次のとおり発表した。

  • 妊娠前、妊娠中、出産後のケアの改善
  • 婦人科疾患や月経の問題に対するケアの改善
  • 女性のための保健ハブ(注2)の拡大
  • 格差是正に向けた取り組み、脆弱な女性への支援の改善
  • 女性の健康に関する研究の促進

(注1)7つの特定症状の患者に対し、かかりつけ医の診察なしで処方を行うサービス。

(注2)ヘルスケアの専門家と既存サービスを統合し、地域社会で女性向けの総合健康サービスを生涯にわたり提供することを目的としたハブ。

(山田恭之、野崎麻由美)

(英国)

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