欧州環境庁、初の欧州気候リスク評価を発表

(EU)

ブリュッセル発

2024年03月18日

欧州環境庁(EEA)は3月11日、気候変動対策と影響を受けやすい分野の優先政策を特定するため、初となる「欧州気候リスク評価」(EUCRA)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州の取り組みは、増加するリスクに追いついておらず、気候変動対策は時間がかかるため、潜在的なリスクへの対策も必要となる可能性があると警告した。

報告書では、5分野(生態系、食料、健康、インフラ、経済・金融)で36の気候リスクを特定した。半数以上は迅速な取り組みを要し、中でも生態系の保全や暑さ対策、洪水や山火事から人々とインフラを守ることなどの8リスクは緊急性が高いとした。

5分野のリスクに対するEEAの説明は次のとおり。

  1. 生態系:他の4分野に連鎖する可能性が高く、大部分のリスクは緊急の行動を要する。中でも、海洋および沿岸生態系に対するリスクは深刻だ。
  2. 食料分野:暑さと干ばつによる農作物生産へのリスクは、南欧では既に危機的なレベルにあり、中欧も例外ではない。特に、長期にわたる干ばつは広域に影響を及ぼし、農作物の生産や食料安全保障、飲料水の供給の脅威となる。解決策の1つとして、動物性タンパク質の一部を持続可能な方法で栽培された植物性タンパク質に代替するだけでも、水の消費と輸入飼料の依存を減らすことができる。
  3. 健康分野:最も深刻で緊急なのは暑さで、屋外労働者や高齢者、ヒートアイランド現象が強い都市部や冷房の利用が難しい地域で簡素な住宅に住む人々などが高いリスクにさらされている。リスクを軽減するには、都市計画や建築基準、労働法など従来の健康政策外の取り組みが必要。
  4. インフラ分野:頻発する異常気象はエネルギー、水、輸送などへのリスクを増す。南欧では、暑さと干ばつがエネルギー生産や送電、需要に大きなリスクをもたらすため、住宅も気温上昇に適応させる必要がある。
  5. 経済と金融分野:異常気象により、保険料が引き上げられたり、資産や住宅ローンに影響を与えたり、政府支出や融資コストを増加させたりするリスクがある。また、民間保険の付保状況の違いによって、低所得世帯はより脆弱(ぜいじゃく)になる可能性がある。

(大中登紀子)

(EU)

ビジネス短信 66958969c6edbed3