2024/2025年度の予算案公表、不動産取引の印紙税を廃止、税金など減免措置を縮小

(香港)

香港発

2024年03月07日

香港特別行政区(以下、香港)政府は228日、2024/2025年度(20244月~20253月)の財政予算案を発表した。併せて、2023年通年の実質GDP成長率(確定値)を3.2%と公表、2024年通年の成長率を2.53.5%とする見通しを示した。なお、2025年から2028年までの経済成長率は年平均3.2%と予測されている。

2024/2025年度予算案では、投機抑制を目的として導入された、住宅取引にかかる印紙税の廃止を明記。不動産購入から2年以内の売却時に課税される特別印紙税、非香港永久居民に課税される購入者印紙税、非香港永久居民または2軒目以降の不動産購入時に課税される新規住宅印紙税が即時撤廃された。中小企業向け信用保証制度の申請期限は20263月まで延長。また、2023/2024年度の給与所得税、個人所得税および法人税は3,000香港ドル(約57,000円、1香港ドル=約19円)を上限として免除される。固定資産税の減免措置は2024/2025年度の第1四半期のみ1,000香港ドルを上限とする。いずれも、2023/2024年度と比較すると免除額は縮小した。

香港政府は、環境への配慮とデジタル化に重きを置く。グリーンフィンテックへの資金調達や商業化支援を目的とした、新しいグリーンフィンテック概念の実証助成スキームを2024年上期に開始の予定。電気自動車(EV)の初年度登録税免除も2026年末まで延長する(ただし、減免は40%まで)。また、202312月に実施した「広東・香港・マカオグレーターベイエリア(中国本土、香港)における個人情報の越境移転標準契約」の試験結果を踏まえ、適用範囲の拡大や香港の金融決済サービスで銀行間送金システムのFPSを活用したデジタル人民元ウォレットへのチャージなど香港における試行範囲を拡大する予定だ。

また、香港政府は、イノベーション・技術(IT)分野への注力も引き続き行う。30億香港ドルを割り当て、「数碼港」(サイバーポート)(注)に人工知能(AI)スーパーコンピューティングセンターを設置する。大学、研究開発機関や企業での活用のため、早ければ2024年内に当該センターを稼働させる。また、第3世代半導体の研究開発促進に向けマイクロエレクトロニクス研究開発機構を2024年に設立し、広東・香港・マカオグレーターベイエリアの包括的な製造業における産業チェーンを活用する予定。

これらの結果、2024/2025年度予算案の歳出は約7,769億香港ドル、歳入は約6,330億香港ドルとなり、約1,200億香港ドルの政府債券発行分を含めると財政赤字額は約481億香港ドルに上る。また、2023/2024年度の財政赤字額は、当初見込みの544億香港ドルを大きく上回る約1,016億香港ドルとなり、20243月末時点での財政準備金は約7,332億香港ドルに減少する見通し。香港政府は、財源確保に向け、商業登記費用を41日から200香港ドル引き上げ2,200香港ドルとする。たばこ税も2年連続で引き上げる(引き上げ率は2023年度と同率で1本当たりの税額は0.8香港ドルとなる)。また、20251月から宿泊税(税率は3%)を復活させる。2024/2025年度から2028/2029年度にかけて財政黒字への転換を目指し、20293月末時点での財政準備金を約8,322億香港ドルと見込んでいる。

(注)「数碼港」(サイバーポート)は、香港政府が2003年に建設した研究開発およびイノベーション推進拠点。

(松浦広子)

(香港)

ビジネス短信 0d1b7ccc7a7f09a9