シルバー事業展開の大連康養産業集団、日本との連携も視野に

(中国)

大連発

2024年03月18日

シルバー事業、リハビリ・医療事業、葬儀事業を展開する、中国大手国有企業の大連康養産業集団が2022年8月、大連市に設立された。同集団の子会社で、シルバー事業を管轄する大連康養集団養老服務の張彦博総経理に、事業状況や日本企業との連携の意向について話を聞いた(インタビュー日:2024年3月5日)。概要は次のとおり。

(問)大連康養産業集団の主な業務内容は。

(答)大連康養産業集団は国有資本を管轄する大連市国有資本管理運営の完全子会社で、公益的な取り組みが求められている。シルバー事業においては、幅広い高齢者に寄与する「普恵」(注1)サービスの提供のほか、要介護者向けの介護サービスなど市場のニーズに応える専門的なサービスも提供し、業界全体を牽引する模範的な取り組みが求められている。

(問)シルバー事業の取り組み状況は。

(答)在宅サービス、通所サービス(デイサービス)、施設サービスを展開している。当社で最初にサービスを開始したのが在宅サービスで、政府の受託事業が中心だ。低所得者など政府がケアする約1,200世帯の高齢者を対象に、身体介護、入浴介助、掃除などの訪問によるサービスを提供している。通所サービス拠点は9カ所ある。健常者も要介護者も利用可能で、サービス内容は多種多様だ。

2023年末に老人ホームを2軒オープンした。健常者向けが1軒(538床)、要介護者向けが1軒(163床)。2024年後半には、認知症の高齢者を受け入れるグループホームを1軒(19床)、2025年には、健常者・要介護者がともに入居可能な総合型施設を1軒(772床)オープン予定だ。医療サービスとの連携を重視し、要介護者向けの施設には医療施設を併設している。

利用料は、「普恵」サービスの提供が目的であるため、在宅、通所、健常者向け施設の利用費は大連市の平均年金水準〔月額3,000~3,500元(約6万~7万円、1元=約20円)〕で利用可能な価格を設定している。一方で、要介護者向け施設は各種コストがかかるため、平均年金水準の約2倍を超える価格に設定している。当社では、価格が高くても品質を求める顧客層を主要ターゲットとしている。

(問)現在抱えている課題は。

(答)現段階の主な顧客層は70歳以上の高齢者だ。この年齢層は節約志向が強く、サービスや商品の品質よりも価格を重視する高齢者が多いのが特徴だ。大連市では長期介護保険(注2)が導入されていない。そのため、現段階では要介護者向けの老人ホームのように根強いニーズがある分野を除き、安定的な顧客層の確保と収益モデルの構築が難しい一面がある。当社にとって安定的な収入源になる事業の創出も急務で、今後も新しいビジネスモデルを模索していく。

(問)日本企業との連携意向は。

(答)当社としては現時点で、介護職員のスキルアップ、手震えのある高齢者に役立つ食器など小物系の介護用品に関心が高い。これらの分野で日本企業は経験や実績があるので、連携していけたらよいと思う。また、生活リハビリサービスや福祉用具のレンタルサービスは中長期的に展開予定があり、関連企業との交流を望んでいる。

(注1)「普恵」サービスとは、誰もが普遍的に利用可能な価格帯で品質が保障できるサービスを指す。

(注2)中国では2016年から一部の都市で試験的に介護保険を導入しており、現在では計49都市・区・自治州で実施されている。

(呉冬梅)

(中国)

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