新国内産業支援プログラムに約9兆円の予算投入へ、国産化や農業機械化推進

(ブラジル)

サンパウロ発

2024年02月05日

ブラジル連邦政府は1月22日、国内産業支援により、国内の生産・雇用拡大、イノベーション創出を目指す「新ブラジル産業プログラム」を発表した。2023年から2026年までの予算総額見込みは約3,000億レアル(約9兆円、1レアル=約30円)で、国立経済社会開発銀行(BNDES)によって提供される低金利の融資が予算総額の大半(2,500億レアル)を占める。

本プログラムは次の6つの分野に分けられ、それぞれ2033年までの目標が定められている。

  1. 農業:家族農業の機械化率を現状の18%から70%に引き上げること、家族農業で使用される農業機械の95%を国産にすることなど。
  2. 保健:薬品や医療機器など国産医療品のシェアを42%から70%に引き上げることなど。
  3. 都市生活の向上:電動バスなどサステナブルな交通機関の国産割合を25%引き上げることなど(電動バスの場合、現時点の59%から84%へ)。
  4. デジタルトランスフォーメーション(DX):国内製造業のデジタル化率を現時点の23.5%から90%に引き上げることなど。
  5. バイオエコノミー・脱炭素化:国内産業による温室効果ガスの排出量を30%削減すること、輸送用エネルギーマトリクスにおけるバイオ燃料の割合を現在の21.4%から50%に拡大させることなど。
  6. 防衛:防衛に関するクリティカルな技術部分を50%国産にすることなど。

BNDESの融資のほか、国産品を優先する政府調達で国内企業を支援する仕組みも本プログラムに組み込まれている。例えば、バイオエコノミー・脱炭素化の分野では、連邦政府が運用する低所得者向け住宅供給プログラムも対象とされ、建てられる住宅にソーラーパネルの設置が計画されている。具体的な条件は今後定められるが、政府がソーラーパネルを調達する場合、国産品が優先される。

ブラジル全国工業連盟(CNI)は、1月23日に公式サイトで、本プログラムを「ブラジル産業を再活性化するための道を開くもの」として評価した。全国自動車製造業者協会(Anfavea)も、1月22日にリンクトイン公式アカウントで同意見を表明した。一方、批判的な声もある。ブラジルを代表するシンクタンク、ジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)のアルマンド・カステラール教授は1月23日付現地紙「グローボ」のインタビューで、BNDESなど連邦政府関連の金融機関が低金利で融資することで財政赤字のリスクが高くなると指摘した。また、金融業界のRBインベスチメントスのグスタボ・クルーズ戦略担当は1月22日付現地紙「エスタード」のインタビューで、国産品を優先して政府調達する措置を批判した。グスタボ氏は、グローバル化と外国企業との競争に伴い国内産業が過去20年間で縮小したと指摘し、「国内企業への保護主義で、この差を克服する効果がないことは既に証明されている」と批判した。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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