2024年度の個人所得税減税策を発表

(オーストラリア)

シドニー発

2024年02月06日

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は1月25日、2024/2025年度(注1)から導入する個人所得税の減税策を発表した。連邦政府の2022/2023年度の基礎的現金財政収支が221億オーストラリア・ドル(約2兆1,437億円、豪ドル、1豪ドル=約97円、GDP比0.9%)と15年ぶりの黒字を達成したことを踏まえて、連邦政府は財政責任を果たしながらインフレ圧力をかけないかたちで、主に低・中所得者を対象により多くの人の税負担を軽減することを目指していると説明した。

個人所得税の減税は、もともと保守連合(自由党・国民党)による前政権時代の2018年に決定、法制化されたもので、低・中所得者を対象に、2018/2019年度、2020/2021年度、2024/2025年度と3回にわたり、税率を段階的に引き下げる内容だ。今回、アルバニージー政権は2024/2025年度から適用する第3弾の減税について、インフレが続く現在の経済情勢を踏まえた生活費高騰対策として、低・中所得者が減税の恩恵をより受けられるよう、前政権時代に決定した所得区分と税率を変更した。例えば、年収1万8,201豪ドルから4万5,000豪ドルの所得区分の税率は当初19%だったが、今回発表の減税策では3ポイント引き下げて16%となる(添付資料「表1 労働党政権による2024/2025年度からの個人所得税・第3段階の新税率」、「表2 2018年に決定されていた個人所得税・第3段階の税率」参照)。なお、既に法制化されていた減税率を変更するため、連邦政府は改正法案を議会に提出する予定だ。

経済界、第3弾減税策の変更ではなくより抜本的な税制改革実施の必要性訴える

オーストラリア産業グループ(Ai Group)などの経済団体は声明を発表し、連邦政府にこれまでの減税策を貫くべきと主張した。公約の変更が政府に対する国民の信頼を損なうことや、連邦政府やオーストラリア準備銀行(中央銀行)によるインフレ見通しが計画されていた減税策を考慮に入れて推計されていること、短期的でその場しのぎの対策ではなく、政府歳入の直接税(個人所得税など)税収への大幅な依存(注2)を減らし、間接税(財・サービス税:GST)による税収を増やしてバランスを図ることで、長期的な財政健全化などの達成を目指す連邦政府による包括的な税制改革実施の必要性を強調した。

(注1)2024年度は2024年7月1日から2025年6月30日まで。

(注2)オーストラリアでは、他国と比較して、政府歳入に占める個人所得税、法人税など直接税からの税収割合が多い。2023年のOECDのレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、政府歳入に占める個人所得税の税収割合が加盟国平均24%に対し、オーストラリアは39%となっている。1月18日のIMF4条協議レポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、長期的な財政健全化や生産性向上のため、高齢化で労働者が今後減り、社会給付が膨らむなどのリスクを踏まえ、直接税と間接税のバランスを立て直すなど、包括的な税制改革実施の必要性が提言されている。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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