欧州産業界、EUの産業競争力強化に向け相次ぎ提言
(EU)
ブリュッセル発
2024年02月22日
欧州産業界は、2024年6月の欧州議会選挙後の新体制発足を見据え、認可手続きの迅速化や欧州単一市場の強化など、EUの産業競争力強化を重視した政策運営を求める提言を発表している。
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は2月13日、EU域内における認可手続きに関する調査報告書を発表した(プレスリリース)。調査は2023年5~6月に実施。事業の認可手続きにかかる時間を問い、域内の21カ国に本社を置く240社(35%は中小企業)が回答した。回答企業の約60%は許認可取得まで1~6年要すると回答し、このうち12%は3~6年要したと答えた。複雑で長期にわたるプロセスは投資の障害となると回答した企業は83%に上った。長期化の要因として、EUや加盟国の関連法令の複雑さや担当機関の審査遅滞と人手不足、関連機関との連携不足などが挙げられた。特に、回答企業の63%は環境影響評価の遅滞が認可プロセスの長期化につながっていると指摘した。迅速化に必要な施策としては、(1)担当機関の審査期限の設定、(2)担当機関と企業間のコミュニケーションの改善、(3)最終認可前の事業や建設開始の容認、(4)申請プロセスのデジタル化などが挙がった。
また、米国と中国は迅速化に向け関連法を改正したり、短期間での審査を法規定したりしているが、EUではネットゼロ産業法案(2024年2月14日記事参照)などで迅速化に取り組むものの、対象分野・技術が限定的であることや、複数の法令があり一貫性に欠けているとの課題を指摘。認可の迅速化はEUの産業競争力強化に向けた最優先課題と位置付け、全ての産業部門とインフラ整備において、EUレベルでの取り組み加速が必要だとした。
産業競争力の低下に危機感、域内の市場障壁の撤廃を強く要請
欧州自動車工業会(ACEA)は2月13日、欧州工作機械工業連盟(CECIMO)などと、域内のイノベーションや投資の活性化、経済成長、越境取引の円滑化のための、域内の市場障壁の撤廃と欧州単一市場の強化を要請する共同声明を発表した(プレスリリース)。声明に署名した産業部門は自動車と工作機械に加え、金属、繊維、製薬、食品、エネルギー、デジタル、金融など多岐にわたった。また、(1)新たな規制について産業競争力への影響評価を行い、企業負担を軽減、(2)単一市場強化に関する専門部局を欧州委に開設、(3)市場障壁撤廃に向けた産業界との連携強化なども提言した。
(滝澤祥子)
(EU)
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