前倒し大統領選で、現職アリエフ大統領が5選

(アゼルバイジャン)

調査部欧州課

2024年02月16日

アゼルバイジャン中央選挙管理委員会は2月11日の会合で、2月7日に実施された大統領選挙の最終結果を承認した。現職のイルハム・アリエフ大統領が92.12%の票を獲得して当選した。投票率は76.43%だった。選挙には、アリエフ氏を含め7人が立候補していた。

アリエフ大統領は父親のヘイダル・アリエフ氏の跡を継ぐかたちで2003年10月の選挙で初当選して以来、大統領の座についている。現行のアゼルバイジャン憲法では、大統領の任期は7年で、多選制限は設けておらず(注)、今回の当選で5期目となる。

大統領選挙は本来2025年5月に予定されていたが、2023年12月にアリエフ大統領の発案で前倒しが突然決定された。前倒しの理由について、専門家や野党の政治家から、a.野党勢に準備する時間を与えないため、b.3月のロシア大統領選挙と歩調を合わせるため、c.アリエフ氏の大統領就任20周年を記念するため、d.経済不振への国民の不満が小さいうちに済ませるためなど、さまざまな憶測が出ていた。さらに、2023年9月の軍事作戦によりアルメニアとの係争地ナゴルノ・カラバフの支配権を取り戻し、国の一体感のために大統領選挙を実施するという意図があったとみられている。実際、アリエフ大統領はナゴルノ・カラバフのハンケンディ市に赴いて投票した。

アリエフ政権の5期目の課題として、同大統領は「領土の解放」という国家理念が達成された後の新たなガイドラインの設定を挙げている。モスクワ国際関係大学の国際問題研究所欧州大西洋安全保障センターのセルゲイ・マルケドノフ主任研究員も、ナゴルノ・カラバフの帰還が国のアイデンティティーだったが、それが達成された今、多くの未解決の問題に目が行くと指摘する。その中の1つとして、非石油・ガス部門の強化に努めても依然として資源輸出に頼る経済の多角化を挙げた(RBK2月8日)。

(注)大統領の任期は、2016年の国民投票で5年から7年に変更された。多選制限は2009年の国民投票で廃止された。

(小林圭子)

(アゼルバイジャン)

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