米下院、児童税額控除拡大や2017年トランプ減税延長などの税制パッケージを可決

(米国)

ニューヨーク発

2024年02月02日

米国下院は1月31日、児童税額控除の拡大や2017年トランプ減税の一部延長などをパッケージ化した税制法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(米国家族および労働者に対する税軽減法)を超党派で可決した。賛成357、反対70だった。主な内容は次のとおり。

(1)勤労者世帯に対する減税

児童税額控除関係では、子供1人当たりの還付額を引き上げるとともに、子供の数に合わせて還付額を拡大できるようにする。現在は子供の数にかかわらず、2,500ドルを超える分の勤労所得について最大15%までの額を還付(上限1,600ドル)する仕組みとなっているが、この額に子供の数を乗じた額を還付する仕組みに拡大する。さらに、子供1人当たりの還付額上限について2023年度は1,800ドル、2024年度は1,900ドル、2025年度は2,000ドルに拡大する。

(2)イノベーションと成長の促進

研究開発控除関係では、研究開発費用の即時控除の対象となる期間(注)を5年間延長する。さかのぼって2021年12月31日から2026年1月1日までの間に行われた研究開発・実験費用が対象となる。また、耐用年数20年以下の固定資産に対する100%ボーナス減価償却についても対象期間を5年間延長する。そのほか、減価償却費などに関する課税所得の算定方法についての見直しなども含まれている。下院歳入委員会は、これらの減税措置により、新たな投資や、多数の雇用の創出につながると主張している。

また、上記のほかに、国際競争力の向上として台湾と米国との間で投資を行った場合の二重課税の軽減措置や、災害を受けた地域コミュニティに対する税額控除、低所得者向け住宅融資に関する規定の見直しといった内容も含まれている。

今回の法案を主導した下院歳入委員会のジェイソン・スミス委員長(共和党・ミズーリ州)は「この税制は成長促進、雇用促進、そして米国促進だ」として、その意義を強調した。今回の法案に関しては、不法移民がより多額の児童税額控除を受けることになるとして、一部の共和党議員から反発があったものの、民主党が望む児童税額控除の拡大と共和党が求める企業向けのトランプ減税の延長を組み合わせることにより超党派の合意が成立した。ただし、上院において本法案がいつ審議されるのかについては、現時点では見通せていない。

(注)2017年税制改革法では、2022年以降は研究開発費用の即時控除は認められず、国内由来の研究開発については5年間、国外由来のものについては15年間の期間にわたり減価償却する中で控除される仕組みとなっていた。

(加藤翔一)

(米国)

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