ロンドンでライフサイエンスサミット開催、強靭性や産業集積について議論

(英国)

ロンドン発

2024年02月26日

英国のインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)は2月8日、ロンドン西部ホワイトシティの同大学キャンパスでジョードロップ(JawDrop)ライフサイエンスサミットを主催した。ヘルスケア業界の大手企業、関連業界団体および自治体から約230人が集まり、ライフサイエンスの強靭(きょうじん)性、ホワイトシティにおけるライフサイエンスクラスター、薬剤耐性菌への対応という3つのテーマでパネルディスカッションが行われた。

パネリストからは、英国のバイオテクノロジー産業の強靭性についての課題として、データ生成までに多くの資本を必要とする点、拡大期からIPO(新規株式公開)までの資金調達の課題、米国食品医薬品局(FDA)による認可を視野に入れたグローバルなビジネス展開の必要性について議論が行われた。また、英国のライフサイエンス産業の特徴として、欧州における投資先として首位の座を維持している点、アーリーステージの資金調達が改善してきている点、政府として基礎科学への資金援助とインフラ整備を通じた産業支援を行う政策を掲げている点について言及があった。

ICL科学部長のオスカー・セス氏は、パネルディスカッションの中で「アカデミアと中小企業のネットワーク構築と協力的なアプローチが重要」とコメントした。また、労働党影の科学・研究・イノベーション相のチ・オンウラ氏は「スタートアップは最大11の規制当局に直面する可能性がある」と規制の煩雑さについて触れた一方、「労働党は、産業戦略としてケアリング・フォー・ザ・フューチャーを掲げており、(ライフサイエンス分野における)さらなる支援を行う見込みだ」とした。

ホワイトシティキャンパスにオフィスを構える、エイプリル・ラボ(Aprile Lab)の担当者は「資金確保は依然難しい状況ではあるが、英国のライフサイエンスは大変活発な分野だ」と述べた。

ICLとロンドン西部ハマースミス・アンド・フラム区は2017年から、ホワイトシティ・イノベーション地区設置の構想を進めた。研究開発を通じてライフサイエンス、バイオテクノロジーなどの分野におけるイノベーションや産業と学術界の協業促進を図っている。具体的には、中小企業に対しコワーキングスペースやインキュベーション施設などを提供しており、ネットワークの構築支援を通じて資金へのアクセスをサポートしている。今回のサミットの名称であるジョードロップは、同イノベーション地区におけるアカデミックやスタートアップ、企業、投資家向けサミットの総称。

(チャウジュリー・クリシュナ、榊原達也)

(英国)

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