電子決済大手ペイティーエム傘下銀行に業務停止命令
(インド)
ムンバイ発
2024年02月09日
インド準備銀行(RBI、中央銀行)は1月31日、電子決済サービス「ペイティーエム(Paytm)」を手掛けるワン97コミュニケーションズ傘下の銀行ペイティーエム・ペイメンツ・バンク(PPBL)に対し、「コンプライアンス違反と重大な監督上の懸念がある」として、3月以降の銀行業務の大部分を停止するよう命じた。
この発表により3月1日以降は、顧客が同行に保有する口座、ウォレット、ファスタグ(インド版ETC)、NCMC(全国共通交通カード)などへの入金ができなくなる。ただし、残高の利用、現金引き出し、電子決済の統合決済インターフェース(UPI)を活用したサービスなどは継続して利用できる。
同行は2022年3月に、RBIより、新規顧客受け入れの即時停止と外部監査法人によるシステム監査の実施を命じられていた。監査報告書で継続的な法令順守違反が指摘されたことから、今回の措置が取られた。RBIは違反の内容を明らかにしていないが、現地報道によると、同行において数十万の口座が適切な本人確認なしに開設されており、顧客管理違反の疑いがあるとみられる(「ヒンドゥスタン・タイムズ」2月6日)。ワン97コミュニケーションズは2月1日以降に声明を相次いで発表し、同社とPPBLは別の組織であり、どちらも外国為替規定違反での捜査を受けていない、とコメントしている。
ペイティーエムは、インドの電子決済サービスの草分け的な存在で、UPIの決済件数ではフォンペ、グーグルペイに次ぐ3位のシェアを占める。日本の決済サービスPayPay(ペイペイ)に対して技術支援を行ったことでも知られ、ソフトバンクグループが出資している。今回のRBIの措置は、同社の経営に深刻な影響を与えることが想定され、親会社のワン97コミュニケーションズの株価は1月31日から2月5日にかけて約42%下落し、その後2日間は上昇した。
(丸山春花)
(インド)
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