2023年第4四半期成長率2.8%、通年では1.2%と成長鈍化

(シンガポール)

シンガポール発

2024年01月11日

シンガポール貿易産業省(MTI)は1月2日、2023年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率(経済成長率)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが速報値(注1)で前年同期比2.8%だったと発表した。前期(1.0%)から1.8ポイント成長が加速した。2023年通年のGDP成長率については、2023年11月に「1.0%前後」と予測していたが(2023年11月30日記事参照)、今回1.2%と発表された。前年の成長率(3.6%)から大幅に鈍化した。

産業別にみると、製造業は前年同期比3.2%増と、前期(マイナス4.7%)からプラスに転じた。MTIは、精密工業クラスターを除くすべての分野で生産が拡大したことを理由に述べた。一方で通年では、3.6%のマイナス成長となった。建設業は、公共・民間双方での建設受注高増加を要因とし、9.1%増と前期(6.2%)を上回る成長になり、通年でも7.7%の成長を記録した。

首相、新年のメッセージで生活費上昇に言及

リー・シェンロン首相は2023年12月31日、新年に向けたメッセージ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。メッセージでは、2023年の経済成長率については景気後退を回避したと評価した。一方で、インフレ率は徐々に低下しつつあるものの、家計は依然として生活費上昇の圧力を感じていると述べた。また、2024年の経済成長率は年1~3%になるとのMTIの予測に触れ、インフレ率の低下にも期待を示した一方で、経済成長は外部環境に大きく左右されると述べた。

財・サービス税(GST)の増税(注2)については、増税分を高齢化に伴う医療費の増大に対応するための財源に充てると述べたうえで、国民の家計支援のためのパッケージ(注3)を2024年も継続するとした。これにより、長期的な財政の健全化と生活困窮世帯の支援を両立することができるとした。

(注1)速報値は主に、2023年10~11月の統計に基づく。

(注2)GSTの税率は2022年まで7%だったが、2023年から8%、2024年1月1日からは9%に引き上げられた。

(注3)GST税率引き上げの影響を緩和する政策で、アシュアランスパッケージ(Assurance Package)と呼ばれる。所得額や年齢などに応じた現金給付や、20歳以下および55歳以上のシンガポール国民に対する医療費補助などからなる。

(糸川更恵)

(シンガポール)

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