総統選の結果受け、米メディアや有識者は台湾巡る国際関係の継続性に着目

(米国、台湾、中国)

ニューヨーク発

2024年01月19日

台湾で1月13日に行われた総統選挙では、対中強硬派の与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳氏が当選した(2024年1月15日記事参照)。米国国務省は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、頼氏の当選に祝意を示し、「米国は(台湾)海峡両岸の平和と安定の維持と、威圧や圧力のないかたちでの相違点の平和的解決にコミットしている」と言及した。また、「1つの中国政策」に沿って、台湾との長年の非公式な関係をさらに発展させることを期待している、と記した。

米国の主要メディアは総統選の結果について、2023年11月の米中首脳会談(2023年11月16日記事2023年11月17日記事参照)を経て安定化に向かう米中関係が試されているとの論調で、選挙の地政学的影響を交えて伝えた。「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版(1月15日)は、中国政府が米国務省の声明に反発したことに触れ(2024年1月16日記事参照)、「2国間の緊張を最小限に抑えようとするここ数週間の一連の外交にもかかわらず、米中和解の継続性の危うさを浮き彫りにした」と報じた。ブルームバーグ(1月15日)は、民進党が立法委員選で過半数を確保できなかったことから「選挙の大きな勝者は現状維持だ」と評した。行政府と立法府の間のチェック・アンド・バランスが台湾政府の急な政策変更を難しくし、米中関係の緊張激化のリスクを潜在的に低下させると分析した。

米国の有識者も台湾を巡る国際関係の継続性に着目している。アジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)のシモナ・グラノ上級研究員は1月16日に発表したレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、地政学的なホットスポットかつ主要な半導体製造者という台湾の役割は、今後もその重要性を増し、米国や西側諸国が中台両岸の安定を守るために投資し続けることを確実にすると指摘した。フーバー研究所のランヒー・チェン研究員は、頼氏の勝利は台米がより緊密な協力を追求する努力があと4年続くことを意味するとし、これは(2024年)11月の米国大統領選挙で誰が勝っても同じで、米国では台湾への超党派の支持が続くと見通した(CNN1月16日)。一方、スティムソン・センターのロバート・マニング特別研究員は1月13日の論考外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、米国連邦議会では400本近い中国関連の法案が提出されているとした上で、台湾への強い支持を示そうとする議会が意図せず中国政府の過剰反応を煽り、米中の緊張を高める可能性があるとの懸念を示した。

実際、連邦議会の台湾支持は鮮明だ。総統選の結果を受け、下院の中国特別委員会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます上院外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます下院外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの各外交委員会は、台湾との関係強化に期待する声明を相次いで発表した。マイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州)はX(旧ツイッター)で、頼氏の総統就任後に、下院の関係委員会の委員長に代表団を率いて台北を訪問するよう求める意向を表明した。「安全保障と民主主義への議会の継続的なコミットメントを強調する」ことが目的としている。

(甲斐野裕之)

(米国、台湾、中国)

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