政府、経済再建に向けた大型改革を発表、規制緩和を推進

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年12月22日

アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は12月20日、規制緩和など経済の立て直しに向けた大型改革を発表した。翌21日に、300項目以上の法改正を定めた必要緊急大統領令(DNU)70/2023号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます「アルゼンチン経済再建のための基盤」を公布した。

同DNUの第1条では、2025年12月31日まで経済、金融、財政、行政、社会保障、公共サービス、衛生、社会に関する緊急事態宣言がなされている。DNUによる主な改革項目は次のとおりだ。

  • 不動産賃貸契約の妨げとなっている不動産賃貸法(法律27551号、Ley de Alquileres)の廃止。
  • 国家の干渉や規制が自由市場経済を阻害している供給法(法律20680号、Ley de Abastecimiento)、公的部門に国産品の調達を促す国産品調達法(法律18875号、Compre Nacional)、アルゼンチンサプライヤー開発法(27437号、Compre Argentino)の一部を改正、陳列法(法律27545号、Ley de Góndolas)、産業振興法(法律21608号、Promoción Industrial)、商業振興法(法律18425号、Promoción Comercial)の廃止。経済省内に設置された価格動向調査局の廃止。
  • 国営企業の民営化を禁じる措置などを撤廃。将来的な民営化のため、全ての国営企業の法人形態を株式会社へ転換する。国営アルゼンチン航空の株式の一部または全体を従業員に譲渡することを認める。
  • 新規雇用創出を促すための労働関連制度の近代化。
  • 貿易促進に向けた関税法の改正。輸出入業者の登録義務を撤廃。貿易手続きの簡素化。国内への投資促進のため、輸出入取引を妨げる措置を禁ずる。
  • 外国人・外国企業による農地の所有を制限する土地所有制限法(法律26737号、Ley de Tierras)の廃止。
  • 砂糖、オリーブ、ワイン産業、農業、鉱業、エネルギーセクターなどにおける規制緩和。
  • オープンスカイ制度(航空会社の路線、便数、運賃などの自由化)の導入。
  • 民間契約における使用通貨など契約内容を規制していた民商法を改正。
  • 社会医療保険制度(Obra Social)および民間医療保険制度(Medicina Prepaga)の改正。医薬品企業に関連する制度の改正。
  • 衛星インターネットサービスの規制緩和。
  • 観光セクターに関連する規制の緩和。

ミレイ大統領は、前政権から引き継いだ社会、経済の状況は前例にないほど悪化しており、財政健全化は不可避とした。「このままではインフレ率は年間1万5,000%となり得る」と述べ、貧困率の増加やインフラ不足など、社会、経済が抱える問題に緊急的に対処するために今回の改革を行う必要があるとした。

大統領の発表を受けて、政界、労働組合、産業界、憲法を専門とする弁護士らは、議会を通さず、DNUによってさまざまな法律の廃止や改正することの合法性を疑問視している(現地紙「アンビト」電子版2023年12月21日)。労働組合は、今回の発表前から既に違法だと訴えており、現政権に対する反対姿勢を強めそうだ。ミレイ大統領は、批判を受けながらもさらに国家改革に関する法案を議会に提出していくと発言している。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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