パナソニック、米シラとEV電池用シリコン負極材の売買契約を締結

(米国、日本)

サンフランシスコ発

2023年12月22日

パナソニックは12月11日、米国シリコンバレーのスタートアップのシラ・ナノテクノロジー(本社:カリフォルニア州アラメダ郡)と、電気自動車(EV)のリチウムイオン電池の原料であるシリコン負極材料の売買契約を締結PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

車載用リチウムイオン電池の性能は、このシリコン負極材を使用すると、現在使用されている黒鉛と比較して、理論値で約10倍の高容量化が可能という。しかし、シリコン負極材は充電時に膨張しやすい特性から電池を劣化させてしまうために、業界では長年研究開発が行われていた。シラは初めて、負極材から黒鉛を完全に排除してシリコンベースの負極材で大量生産を可能にした。

シラは2022年にメルセデス・ベンツと供給契約を締結する最初の次世代バッテリー材料サプライヤーとなった。今回はEVの走行距離と充電時間の可能性を再定義すべく、世界最先端の車載用バッテリーセル製造業者のパナソニックと提携するに至った。パナソニックは、EV需要の急速な増加に合わせるために、2030~2031年までに車載用バッテリーの生産量を200ギガワット(GW)まで増加する予定だ。

EV購入時に米国のインフレ削減法(IRA)による7,500ドルの税額控除を受けるには、北米でのバッテリー製造だけでなく、米国が自由貿易協定(FTA)を結んでいる国から必要な鉱物を調達する必要がある。そのため、次世代のバッテリー製造業者は、中国が主な供給国の黒鉛に依存しない、シリコン負極材のような代替品を探している。

ジェトロのインタビューに対し、シラの商業化とバッテリーエンジニア部門バイスプレジデントのカート・ケルティ氏は「パナソニックと協力したサンプル作成やテストを4年間試行錯誤で行った後に提携が成立した。パナソニックはバッテリー技術のリーダーと目されており、世界をリードするEV会社への主要なサプライヤーだ。さらに、同社は知的財産権を保護してきた歴史があるため、協同できる。シラとパナソニックの経営幹部同士には強い個人的なつながりもある」と述べた。

また、日本市場に進出する予定があるかとの質問に対し、「われわれの最初の工場はワシントン州モーゼスレイクの工場だ。今後数年間はこの工場を拡大していくが、ある時点で、欧州やアジアに工場が必要になると考えている。工場の設置場所は(1)顧客との距離、(2)原材料との距離、(3)電力コスト、(4)電力供給能力、(5)グリーンな電力、(6)認可のスピードとその他の要因により決定することになるだろう」と述べた。

ケルティ氏は、パナソニックの事業開発ディレクターとして米国のバッテリー研究開発ラボを設立し、テスラで11年間、バッテリー技術のシニアディレクターとして、ギガファクトリーのバッテリー原料調達をリードし、その後、シラに転じている。

(松井美樹)

(米国、日本)

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