公式為替レートを50%超切り下げ、他の為替レートも見直し

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年12月14日

アルゼンチンのルイス・カプート新経済相は12月12日、公式為替レートを1ドル=800ペソまで切り下げると発表した。実際、12月13日現在の国立商業銀行であるナシオン銀行の店頭為替レートは、買いが1ドル=790ペソ、売りが820ペソとなっており、切り下げ幅は約50%となっている。公式為替レートの切り下げに伴い、その他の為替レートの見直しが行われている。なお、ブルーレートと呼ばれる非公式の実勢為替レートは12月13日現在、1ドル=約1,100ペソとなっており、公式為替レートとの乖離幅は約40%と、前日の約190%から大幅に縮小した。

政府は12月13日、必要緊急大統領令28/2023号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、財やサービス輸出に適用する為替レート優遇措置を見直し、財、サービスの輸出代金の80%を公式為替レートで、残りの20%を優良スワップ取引(CCL)や電子決済手段(MEP)と呼ばれる債券取引を通じてペソに交換することを認めた。その結果、輸出に適用される為替レートは、1ドル=約860ペソが設定されたことになる。

また同日、公共歳入連邦管理庁(AFIP)一般決議5463/2023号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、外貨の購入や、クレジットカードやデビットカードによる外貨での支払い、国際線航空券の購入代金に課している諸税の税率を引き下げた。これまでの税率は合わせて155%だったが、それを60%に引き下げた。この税率を公式為替レートに加算することで実質的な為替レートを計算すると、1ドル=約1,300ペソになる。税率を引き下げなかった場合は1ドル=約2,000ペソとなり、ブルーレートの水準を大きく超えることから、国民への過大な負担を回避するために税率を引き下げたとみられる。

加えて、必要緊急大統領令29/2023号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、財、サービスの輸入に課されている「社会的包摂の促進と資金調達のための外貨購入に係る税」(通称:パイス税)を引き上げた。財の輸入代金の支払い、貨物運賃など輸送サービス向けの外貨購入に課される税率を7.5%から17.5%に引き上げた。その他のサービスについては従来どおり25%が課税される。17.5%の税率を公式為替レートに加算すると、財および輸送サービスの輸入に適用される為替レートは、1ドル=940ペソが設定されたことになる。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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