EUのAI法案、政治合意後も産業界から懸念の声上がる

(EU)

ブリュッセル発

2023年12月19日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が12月9日に政治合意した人工知能(AI)の包括的な規制枠組み規則案(AI法案)(2023年12月13日記事参照)について、欧州産業界からは早くも法的にあいまいな点が残ったと指摘する声や企業の負担増への懸念の声が上がっている。

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は12月11日、AI規制は必要であり、政治合意は前向きな一歩としつつも、産業界にとっては法的確実性が欠如している可能性があると懸念を示した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。追加のガイドラインなどで、規制内容がより明らかになることを望むとした。また、同規則案の補完的ルールを作成する間にAI関連投資が減退しないよう、AI分野での国際競争力維持に努めなければならないとした。

情報通信技術(ICT)関連産業団体デジタルヨーロッパは12月8日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、AIの使途に応じたリスクベースの規制は支持する一方、生成型AIなど「汎用目的型AI(general purpose AI)」に特化した規定の追加に失望を示した。「企業はAI技術者を雇う代わりに弁護士費用にリソースを割くことになる」と、企業の規制順守に伴うコスト負担を強く懸念した。欧州委員会の影響評価に関する調査では、従業員数が50人の企業の規制順守に伴うコスト負担は約30万ユーロに上ると試算されており、中小企業を中心とした企業への規制対応への支援策の検討を要請した。

一方で、規制が適切に運用されれば、欧州でのAIの活用やイノベーションにとって追い風になるとも評価。今後の規則案の発効に向けた作業では、残っている課題に対処し、政策の方向性を明確にする必要があるとした。

(滝澤祥子)

(EU)

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