中国、ムーディーズの格付け見通し変更に反論、財政の健全性強調

(中国)

北京発

2023年12月07日

中国財政部は12月5日、米国格付け会社ムーディーズが中国の信用格付け見通し(注1)を「安定的」から「ネガティブ」へ変更したことについて「失望した」として、ウェブサイト上で記者に答える形式で反論外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ムーディーズは変更の理由として、地方政府や国有企業に対する財政支援の増加懸念とその影響などを挙げている。なお、長期自国通貨建て・外貨建て発行体格付けは「A1」(注2)に据え置いた

財政部は、中国経済は回復に向かっており、2023年の世界の経済成長に対する寄与率は30%を超えるとした。これにより、財政収入も2023年1~9月には中央政府が前年同期比8.9%増、地方政府が同9.1%増に回復したとして、健全性を強調した。その上で、中国は質の高い経済発展に向けて転換しており、改革を深め、リスクに対応することができるとし、「中国の今後の経済成長や、財政の持続可能性に対する心配は無用だ」とした。

経済成長率鈍化への懸念に対しては、(1)14億人の人口と4億人の中間層を擁する国内市場があること、(2)物価が安定しており、新型コロナウイルスの影響も消えつつあること、(3)質の高い発展を推進し、経済成長の動力転換が進んでいることなどを挙げて、これらにより経済の質の向上と、規模の合理的な拡大が推進されているとした。

地方債務問題については、2022年末時点で地方政府債務〔35兆1,000億元(約737兆1,000億円、1元=約21円)〕と、中央政府債務(25兆9,000億元)の合計額は61兆元、GDP比で50.4%にとどまるとし、国際的に警戒ラインとされる60%を下回っているとした。

不動産市場の低迷による地方財政への影響については、(1)中央からの財政移転強化、(2)地方政府の資金調達の強化や支出構造の調整、(3)地方税の整備といった安定化支援を行っているとした。また、不動産譲渡収入の減少の影響はコントロール可能とした。

中国中央電視台(CCTV)は、今回の変更は(1)新興国に対する厳し過ぎる評価、(2)中国の潜在成長率に対する誤った悲観、(3)中国の政府債務の圧力に対する誤った評価によるものだとした(「中国中央電視台ウェブサイト」12月6日)。

(注1)格付けの中期的な方向性に関する見方。ポジティブ、安定的、ネガティブ、検討中がある。

(注2)格付けはAaa~Cで評価される。Aa~Caaまでの格付は1、2、3に分かれており、1はカテゴリー内で上位、2は中位、3は下位にあることを示す。

(河野円洋)

(中国)

ビジネス短信 1f45e5a83676ba12