PIFがアグリツーリズムとエコツーリズムに特化した企業の設立を発表

サウジアラビアの公的投資基金（PIF）は12月11日、アグリツーリズムとエコツーリズム（注）に特化した「ダン・カンパニー（Dan Company）」の設立を発表した。

同社は、サウジアラビア全土の都市で、魅力的な自然や農業景観を持つユニークな観光プロジェクトの開発を計画する。観光客が、芸術、工芸品、郷土料理などサウジアラビア特有の地域文化や伝統と交流できる体験を提供するために、地域社会と一体となり取り組むとしている。

同社のプロジェクトは、農家や観光ロッジの運営者に対しフランチャイズを付与し、運営者が自身で施設を立ち上げ、建設するために必要な訓練や知識を提供することで、国内外の観光客に新たな経験を提供することを目的とする。民間部門にも投資機会を提供することで、直接的・間接的な雇用機会を創出することに貢献するとしている。

同社初のプロジェクトは、東部州アル・アサ地域で、180万平方メートルのエコリゾート、アグリリゾート、アドベンチャーリゾートの3つのリゾートを、多様な観光客の要望に応えられるようデザインする。同地域はコメとナツメヤシの産地で、アグリリゾートでは、季節ごとの農作業、収穫、農産物の調理など自然体験を重視する。エコリゾートでは、二酸化炭素（CO2）排出量の少ない地元の素材を利用し、動植物の保護も行う。アドベンチャーリゾートでは、乗馬、星空観察、近隣の岩山登山など、環境に配慮した体験を提供する。

本プロジェクトをサウジアラビア全土に展開できるようになれば、2030年までにサウジアラビアの非石油部門GDPに約16億ドル貢献すると見込まれている。PIF不動産ポートフォリオ部門の共同責任者のカリード・ジョハル氏は「同社の設立は、観光業を強化するPIFの戦略を象徴するもので、サウジアラビアの経済発展・成長に貢献する。自然を受け入れる斬新なビジネスモデルを運営し、民間セクターや地元農家をアグリツーリズムやエコツーリズムに参加させ、地域社会における新たな雇用機会の創出や、観光客を魅了し楽しませるユニークな没入体験の促進にも貢献する」と述べた。

PIFは観光分野の成長を支援するため、民間企業との戦略的パートナーシップの機会を強化し、観光投資会社を設立するなど、観光分野への投資に積極的に取り組んでおり、全国の都市経済を活性化するための戦略的投資が多く計画されている（2023年8月3日記事参照）。

（注）アグリツーリズムは、旅行者が農場や農村に足を運び、休暇・余暇を過ごす観光形態。エコツーリズムは、地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝え、その価値や大切さが理解され、保全につなげる仕組み。

（林憲忠）