欧州委、貨物輸送のグリーン化を補完する複合輸送指令の改正案提案

(EU)

ブリュッセル発

2023年11月14日

欧州委員会は11月7日、インターモーダル輸送(注)の利用促進に向け、7月に発表した貨物輸送のグリーン化政策パッケージ(2023年7月19日記事参照)を補完する複合輸送指令の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUの貨物輸送は、道路輸送が鉄道や船舶より圧倒的に多い上、道路輸送は輸送量当たりの二酸化炭素(CO2)などの排出、渋滞、騒音、交通事故などの負の影響が他の輸送手段より大きいとされる。インターモーダル輸送の促進はこれらの負の影響を大幅に軽減できるが、短中距離輸送では行政手続きの煩雑さやコスト高のため、競争力で劣る。今回の改正案は、インターモーダル輸送の効率と競争力を高め、普及につなげる支援枠組みとの位置づけだ。

改正案で提案した主な内容は、(1)運送事業者の許認可手続きの軽減、物流量制限の撤廃、(2)EU加盟国内にインターモーダル輸送を普及するための国内法整備の義務化、(3)貨物積み替え拠点の運営事業者に対する関連情報公開の義務化。

(1)は、道路輸送の場合と比較して負の影響を40%以上軽減するインターモーダル輸送を「複合輸送(Combined transport)」と明確に定義し、支援対象とする。電子貨物輸送情報(eFTI)規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに従い、事業者がEU共通のデジタルプラットフォームに運送情報を入力すると、事業者と加盟国の管轄当局双方に支援対象かが表示されるようにする。

(3)では、インターモーダル輸送の利用を検討する企業が情報にアクセスできるよう、ターミナル事業者に対し、サービスや施設に関する最低限の情報を自社ウェブサイトで公開するよう義務付ける。各加盟国の支援策などを検索できるEUのポータルサイトも設置する予定だ。

このほか、改正案は鉄道や船舶の利用向上のため、出発時刻に合わせて貨物を駅やターミナルに運搬できるように、複合輸送での週末のトラック運行禁止などを免除することも提案。加盟国に対し、貨物の引き受けから引き渡しまでの平均コストを7年半以内に10%以上削減する措置目標を講じることも義務付ける。

欧州委は現行の複合輸送指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの改正を1998年以降2度試みたが、いずれもEU理事会(閣僚理事会)と欧州議会の合意が得られずに法案を撤回した。しかし今回は、欧州グリーン・ディールの一環として改正に強い意欲を見せている。改正案は今後、EU理事会と欧州議会で審議される。

(注)複数の最適な輸送手段を組み合わせ、貨物の引き受けから引き渡しまで一貫して運送を行うこと。

(滝澤祥子)

(EU)

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