即位後初の国王演説、経済成長や社会の強化、人々の安全確保など表明

(英国)

ロンドン発

2023年11月08日

11月7日に新会期に入った英国議会の開会式で、チャールズ国王が政府施政方針の演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(詳細は英国政府ウェブサイト参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))を行った。

現政権は経済成長の拡大と国民の健康、安全の保護を焦点とし、インフレの削減と雇用創出、新規投資に向けた企業支援を継続して取り組むと同時に、政府支出と債務に関して責任ある決断を行うとした(リシ・スナク首相による政府の優先事項を述べた年頭演説は2023年1月6日記事参照)。

演説で触れた法案は16(注)あり、主なものは次のとおり。

  • 洋上石油ライセンス法案:石油・ガス開発の新規ライセンス付与を支援し、外国産エネルギーへの依存度を低下させ、エネルギー安全保障を強化(2023年8月4日記事参照)。
  • 自動運転車法案:自動運転車に関する安全性の枠組みを設け、安全性基準を設定。新たな機関を設置して企業の法的責任を明確化することで、消費者を保護。
  • デジタル市場・競争・消費者法案:消費者の保護を強化し、製品・サービスへの信頼感を向上。競争・市場庁(CMA)に対して、反競争的な活動に迅速かつ効果的に対応する権限を新たに付与。同様に、指定されたテック企業のみを対象とした規制の設定などを行う権限も付与。
  • データ保護・デジタル情報法案:独自のデータ権利枠組みを定め、企業の負担を軽減し、科学研究での不要な障壁を撤廃。一方で、データ規制に違反した機関に対処する能力や権限など、情報コミッショナー事務局(ICO)を強化・刷新。高い国際的データ保護基準を維持し、EUなど国際的なパートナーとの自由なデータ取引を継続。

また、10月の保守党大会でスナク首相が発表した、北部と中部の交通網の整備に向けた投資や16歳~19歳向けの教育制度改革、紙たばこの販売規制などについても紹介した。国営医療サービス(NHS)の待機リスト削減などの計画の実行についても触れた。さらに、犯罪や反社会的行動、テロ行為、不法移民からの人々の保護に取り組むことも表明。ウクライナ支援に向けたパートナー国との連携、NATOの強化や、パレスチナ自治区ガザ地区への人道支援の促進、中東の和平・安定支援を含めた安全保障上の課題への対応についても言及した。このほか、気候変動や生物多様性の喪失への対応を主導、開発途上国のエネルギー移行への支援を継続することに加え、人工知能(AI)の安全な開発に向けた議論も主導するとした。

(注)実際に議会に提出された法案は21。

(山田恭之)

(英国)

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