ポルトガルの首相が辞任、2024年3月に総選挙へ

(ポルトガル)

マドリード発

2023年11月16日

ポルトガルのマルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領は11月9日、議会(一院制)を解散し、2024年3月10日に総選挙を実施すると発表した。リチウム開発や水素製造、データセンターのプロジェクトを巡る汚職疑惑により、アントニオ・コスタ首相が7日に辞意を表明したことを受けた決定。

レベロ・デ・ソウザ大統領は、首相の正式辞任と議会解散は2024年予算法成立後の12月初旬となるとの見通しを示し、「予算法が通れば、(EUの)復興基金の執行も可能となる。解散・総選挙で復興レジリエンス計画〔(Plano de Recuperação e Resiliência:PRR)〕の進行を止めることはできない」と強調した。

コスタ首相は2015年から首相を務めており、2022年1月の前回総選挙では同氏が率いる中道左派与党の社会党(PS)が単独過半数議席を獲得して勝利した(2022年2月7日記事参照)。新型コロナウイルス感染拡大後の復興計画を精力的に進めていたが、今回の汚職疑惑は皮肉にも復興計画の柱となっているグリーン化やデジタル化への投資に絡むものだ。

検察庁の捜査対象となっているのは、(1)北部のリチウム鉱山開発許可(モンタレグレ鉱山と欧州最大級のリシア輝石埋蔵量を有するバローゾ鉱山)、(2)シネス港とオランダ・ロッテルダム港を結ぶグリーン水素サプライチェーン構築〔H2シネス、欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)に申請中、2023年7月20日付地域・分析レポート参照)〕、(3)シネス市の大型データセンター建設、といった重要プロジェクトに関わる贈収賄や便宜供与。逮捕者には、首相首席補佐官や環境庁長官、シネス市長などが含まれている。同首相は自身の関与は否定しているが、犯罪行為の疑いをかけられたまま、首相を続けることはできないとして辞任し、総選挙には立候補しない意向だ。

(小野恵美)

(ポルトガル)

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