10月の郷里送金は好転、送金促進の動きが奏功か

(バングラデシュ)

ダッカ発

2023年11月09日

バングラデシュ中央銀行は、10月単月の郷里送金額は前年同月比29.6%増の19億7,756万ドルと外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます発表した。郷里送金は2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)に入って減少傾向にあったが、7月の水準まで回復した(添付資料表1参照)。

郷里送金回復の背景として、依然として公定レートと統計に反映されない違法な送金(注1)によるレートの差などの構造的な課題(2023年10月11日記事参照)は残っているものの、同送金のプラットフォームとしても活用されているモバイル金融サービス(MFS)を中心とした送金促進の動きがある。例えば、10月に開始したノゴド(Nagad)のキャンペーン(2023年10月26日記事参照)や、米国発MFSプラットフォームで国外24カ国を中心に500万人以上のユーザーを有するペイオニア(Payoneer)アカウントからビーキャッシュ(Bkash)アカウントへの送金サービス〔1回1,000タカ(約1,360円、1タカ=約1.36円)以上〕や、各国に店舗を有する米国系ウエスタン・ユニオン(Western Union)をはじめとする送金事業者(Money Transfer Organization)を通じた郷里送金について、bKashアカウントで受領可能とするサービスなどが恒久化されている。さらに、政府により、送金受領者への現金インセンティブ(2.5%)付与や、証拠書類の提出制度の撤廃、2万ドル相当額を上限としたForm Cによる申告制度の廃止など送金手続きの簡素化も行われている(2023年10月26日記事参照)。

Bkashの出資者でもある商業銀行大手のブラック・バンク(BRAC Bank)で、金融市場部門の市場セクター長を務めるフォジア・ラーマン氏はジェトロのインタビューに対し、「当行では特に郷里送金の促進に力を入れる中、国全体の傾向と同様、当行の送金受領額も10月は増加に転じた。今後、同月並みの水準で送金額が安定して推移すれば、外貨準備高(注2)の減少圧力が緩和すると期待している」と話す(11月5日)。

なお、最新(9月単月)の海外出稼ぎ労働者の派遣者数は前月比22.4%減の10万7,584人外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとなっている。一方、暦年で過去最大の派遣者数を記録した前年(2022年)同月との比較では、5月以降最大の派遣先国のサウジアラビアを中心に増加傾向となっており、2023年の総派遣者数(9月末時点)は前年実績(113万5,873人)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの9割弱(98万9,685人)に達している(添付資料表2参照)。

(注1)「カーブ・マーケット(Kerb Market)」や「地下送金」、ベンガル語では「フンディ(Hundi)」と呼ばれる。

(注2)減少傾向の外貨準備高(IMF基準のグロス値)は206億6,577万ドル(11月1日現在PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))となっている。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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