2024年から貿易円滑化を加速、AFAFGIT運用開始とコンテナ貨物引き渡し短縮で

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年11月24日

マレーシア運輸省は11月21日、ASEAN通過貨物円滑化枠組み協定(AFAFGIT)に基づき、2024年1月1日からマレー半島部で越境輸送の円滑化を適用すると発表した(運輸省プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。陸上輸送におけるコストや所要時間の削減が期待される。

AFAFGITは、ASEAN自由貿易地域(AFTA)実現のため、域内の輸送と貿易の促進を目的として1998年12月16日に加盟国が署名した枠組み。AFAFGIT実施のために開発されたのが、ASEAN税関トランジットシステム(ACTS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだ。2023年11月20日付の官報では、「陸上公共輸送(ASEAN越境貨物車両)規則2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」と「商用車ライセンス委員会(ASEAN越境貨物車両)規則2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の2つの補助法を公示。これに基づき、AFAFGITは2024年1月1日にマレー半島部で運用を開始する。これまでは貨物を陸送する場合、国境での通過に際して税関への申告や、場合によっては別車両への積み替えが必要だったが、AFAFGITに基づきACTSを導入した結果、域内各国の国境での通関手続きを一元化。一度、税関申告をすれば、経由地や目的地の税関での再申告や国境でのトラック積み替えが不要となる。東マレーシア(サバ州、サラワク州)およびラブアン連邦直轄領については、隣国ブルネイ、インドネシア、フィリピンがACTSを導入した時点でAFAFGITの運用を始める。

AFAFGITは、加盟国の管轄官庁が、条件を満たす企業に対し貨物車越境許可証(AGVCB)を500件発給できるほか、全加盟国の合意に基づき発給枠を拡大できると規定している。マレーシアにおいては、陸上公共交通庁(APAD)が許可の発給を担い、税関がACTSシステムの運用を所管する。事業者は2024年1月以降、オンラインで許可の申請が可能になる見込み(APADウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

アンソニー・ローク運輸相は「AFAFGIT導入により、ASEAN諸国間の貨物や商用車の移動がシームレスに行われ、これによって域内貿易は拡大する。マレーシアの物流分野の状況は劇的に変わるだろう」と、国境通関の円滑化に対する期待を示した。

海上輸送における貨物引き渡し短縮も

運輸省は同プレスリリースで、2024年1月以降、港湾の生産性とマレーシアの競争力強化のため、国内すべての連邦港でコンテナの保管、検査および引き渡し手続きを3日以内に完了することを義務付けるとも発表した。同省は2022年5月、国内最大の港湾であるセランゴール州クラン港には先んじて、3日以内の引き渡し完了を義務付けていた。この措置の結果、クラン港において3日以内に手続きが完了するコンテナの割合は、従前の70~75%から、2022年5月~2023年8月末時点では92%に上昇した。

なおマレーシアは、2015年に批准したWTO貿易円滑化協定に基づき、「急送貨物」と「通過の自由」も含めた全ての項目を2022年には履行すると表明していた(2020年3月17日記事参照)。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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