ドイツ生成AIスタートアップのアレフ・アルファ、欧州最大規模の資金調達

(ドイツ)

ベルリン発

2023年11月14日

ドイツの生成人工知能(AI)スタートアップのアレフ・アルファ(Aleph Alpha、本社:ハイデルベルク)は11月6日、シリーズB資金調達ラウンドの成功を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。欧州のAI分野の資金調達ラウンドとしては最大規模となる5億ドル以上の資金調達だ。

同資金は、AIイノベーションパーク(Ipai外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、ボッシュ・ベンチャーズ、シュバルツ・グループ各社といった既存投資家に加えて、クリスト・アンド・カンパニーコンサルティング、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、SAPなどの新規投資家7社から提供される。

アレフ・アルファの創業者のヨナス・アンドルーリス最高経営責任者(CEO)は「今回の投資により、当社の能力をさらに拡大し、当社のパートナーがこの技術開発の最前線に立つことを可能にする。顧客サポートのため、当社は、インフラ、クラウド互換性、オンプレミス(注)サポート、ハイブリッドセットアップの面で、顧客の独立性と柔軟性を維持しながら、継続的にサービスを拡大していく。現在進行中の開発プロジェクトには、ビジネスで重要な要件に合わせたインターフェースやカスタマイズオプションが含まれるようになる」と語った。

米国主導の生成AI分野で欧州発の対抗軸になれるか

アレフ・アルファは、2019年に設立されたドイツのAI開発を手掛ける企業で、国際的な研究者やエンジニアなどで構成するチームが大規模言語モデルやマルチモーダルモデルなどの変革的AIの研究、開発、実装を行い、欧州最速の商用AIクラスターを運営している。

アレフ・アルファの生成AI「Luminous」に関する基本的な技術は、米国のオープンAIの対話型AI「ChatGPT」に比肩すると言われているが、今回の資金調達額5億ドルは、オープンAIが2023年1月にマイクロソフトから調達した100億ドル規模の調達額と比べると見劣りする。しかし、2019年から2023年5月までの生成AI関連企業に対する累積投資額が米国(1位:198億ドル)、イスラエル(2位:6億6,445万ドル)、カナダ(3位:3億9,969万ドル)、英国(4位:3億8,908万ドル)、ドイツ(5位:2億8,218万ドル)ということを踏まえると(2023年9月26日付地域・分析レポート参照)、今回の資金調達額が米国以外の地域での投資額としていかに大きいかが分かる。

また、アレフ・アルファの技術は、産業や公的機関向けのユースケース(活用事例)に特化している点や、欧州で提唱されているデジタル主権を維持し、データを保護し、信頼できるソリューションを提供できる点などに特徴があるとされる。

欧州の生成AIのホープとして期待されるアレフ・アルファの今後の展開が注目される。

(注)管理者自らがシステムを構築して管理・運用する方式。

(日原正視)

(ドイツ)

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