香港政府、深セン市隣接地域の開発戦略の位置づけなど公表
(香港、中国)
香港発
2023年11月09日
香港特別行政区政府発展局は10月30日、「北部都会区アクション・アジェンダ2023」(注1)を発表した。同アジェンダでは、中国広東省深セン市と接する香港の元朗区と北区を中心にした地域を(1)~(4)のエリアに分け、戦略的な位置づけと開発テーマを設定している。
(1)ハイエンドの専門サービスと物流ハブ区域
金融、保険、資産運用管理、法律、会計を中心とした専門サービスを提供し、中国本土企業が香港を通じて海外市場を開拓できるように支援する。また、域内の70 ヘクタール超の工業用地は物流や自動車の販売・修理・メンテナンス用地として確保し、香港と深センとの間の越境物流強化を図る。
(2)イノベーションとテクノロジー区域
香港‐深センイノベーション&テクノロジーパーク(注2)に「グレーターベイエリア(大湾区)国際臨床試験研究所」を設立し、臨床試験と開発強化を図る。世界トップクラスの医療人材や製薬会社の誘致も目標に掲げる。
新田(サンティン)テクノポール(注3)に水産研究センターを設立し、飼料研究開発や疾病予防管理などの水産養殖技術に関する研究と実証を通じて、養殖業の成長と産業化を図る。
(3)越境貿易と工業区域
香港と中国本土間の食品サプライチェーンを強化するため、香港の新界(ニューテリトリー)北区に位置する香園圍周辺に、冷凍肉の保存や物流施設の建設を計画している。また、先端技術を導入した複数階建ての水耕農場と畜産場の建設により、高品質な農産物の生産を目標に掲げる。
(4)環境にやさしいレクリエーション・観光エコシステム
エコツーリズム推進のために、沙頭角制限区域の観光計画を策定、2024年初頭から1日当たり最大1,000人の観光客(うち団体旅行者700人、個人旅行者300人)の制限区域への入域を可能とする。
越境鉄道「港深西部鉄道」建設計画を推進
北部都会区の発展に伴い、香港政府は元朗区にある香港洪水橋と深セン前海を結ぶ越境鉄道「港深西部鉄道」の建設を計画している。2024 年半ばまでに鉄道計画と実現可能性調査、環境への影響、建設・運営の手続きなど課題の検討を完了させる見通し。また、ランタオ島の南東部にある交椅洲の周辺に人工島を建設、鉄道を整備し、洪水橋駅まで延長して港深西部鉄道に接続するプランも示した。
北部都会区アクション・アジェンダの詳細は香港政府のウェブサイトで確認できる。
(注1)2021年施政報告で示された中国広東省深セン市と隣接する元朗区と北区を中心とする大都市圏の建設開発案。
(注2)香港の落馬州(ロクマチャウ・ループ)に位置するイノベーションとテクノロジーセンター。2024年から2027年にかけて段階的に施設が完成する予定。
(注3)北部都会区の中心に位置し、深セン市の皇崗と福田区のイノベーションとテクノロジー区域に近接する。
〔何樂晴(エスター・ホー)〕
(香港、中国)
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