セアラ州でグリーン水素サミット開催、太陽光と風力の相互補完による安定電源を生かした案件披露

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年11月09日

ブラジルのセアラ州工業連盟(FIEC)とブラジル工業連盟(CNI)は102526日、同州でのグリーン水素(注1)生産の可能性をテーマとした「第2FIECサミット」を開催した。同州ではグリーン水素の大量生産は開始されていないが、20212月に同州政府、FIEC、ペセン港湾工業団地(CIPP)、セアラ連邦大学(UFC)が連携し、「グリーン水素ハブ計画」(注2)を発足させて以降、日立エナジーブラジルを含む34のグリーン水素関連の開発計画の覚書(MOU)が発表されており、注目が高まっている。

「セアラ州グリーン水素ハブ」セッションでのFIECのジュランジール・ピカンソ・エネルギー顧問の講演では、ブラジル北東部は風力発電と太陽光発電の両方に高いポテンシャルを有しており、「セアラ州の多くの地域では、風力発電の発電量が日中に減少しても、太陽光発電で補うことが可能」と述べ、風力と太陽光の相互補完性を強調した。さらに「セアラ州は大西洋に面しているため、欧州や米国への輸出も可能」と述べ、物流面の優位性にも言及した。CIPPのウーゴ・フィゲイレド社長によると、CIPP2030年までにロッテルダム港を通じて、年間100万トンのグリーン水素を欧州に輸出することを目指している(注3)。

輸出のみならず、水素の国内利用の重要性を訴える声も上がった。例えば、「投資」セッションで講演したブラジルグリーン水素産業協会のルイス・ビーガ運営委員会委員長は、国内でのグリーン水素を用いたグリーンスチール、グリーン燃料、グリーン肥料などの製造も重要で、連邦政府がこれらの事業を支援すべきだと主張した。ビーガ氏は「グリーン水素を国内市場に導入することで、ブラジル製品の付加価値が向上することになり、ブラジルの再工業化も可能になるだろう」との期待を示した。

(注1)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない。

(注2CIPPの既存の港湾インフラや工業団地を拡大し、グリーン水素製造に欠かせない水や電気の提供サービスを改善することによって、グリーン水素の生産と物流を統合したハブが目指されている。その実現のため、州政府、FIECCIPPUFC20212月に税制インセンティブ、人材育成、応用研究など多数の分野の必要条件について、政策提案ができるワーキンググループを形成した。

(注3)ロッテルダム港はCIPPの株式の30%を所有している。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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