オンライン安全法が成立、ソーシャルメディアのコンテンツ管理責任を拡大
(英国)
ロンドン発
2023年11月06日
英国で10月26日、オンライン安全法が成立した。同法は有害なコンテンツから児童を保護する一方で、成人に対してはオンラインで閲覧できるコンテンツの選択肢を増やすことを目指すとしている。執行は情報通信庁(Ofcom)が担う。
児童の保護については、ソーシャルメディアに対して、違法コンテンツの速やかな削除、もしくは表示されない仕組みづくりを求める。また、児童にとって有害となるコンテンツが掲載されているものについては、年齢制限や年齢確認の実施を導入する。
成人に対しては、違法コンテンツの削除、ユーザー登録時の誓約事項のソーシャルメディア側による履行、閲覧を希望しないコンテンツの除外の3段階を通じて保護を行うとしている。
企業がこれらの規則に従わない場合、最高1,800万ポンド(約32億9,400万円、1ポンド=約183円)もしくは全世界の年間売上高の10%のいずれか大きい方の罰金が科される可能性がある。
規制対象となるコンテンツの例は次のとおり。
- 児童の性的虐待
- 過激な性的暴力
- 不法移民や人身取引
- 自殺の助長
- 自傷行為の助長
- 摂食障害の助長
- 動物虐待
- 違法薬物や武器の販売
- テロリズム
また、同法により、サイバーフラッシング(注1)やディープフェイクポルノ(注2)の共有も犯罪行為とされた。
同法は、インターネットユーザーがオンラインで閲覧する内容をより細かく制御できるようにすること、各プラットフォームに対し、児童へのリスクや危険性の評価を公開することで透明性を高めることも求めている。
Ofcomは同法の施行について、より有害性の高いコンテンツへの規制を優先する段階的な手法をとるとしており、11月9日から意見公募を実施する予定としている。
同法に対しては、ワッツアップやシグナルといったプラットフォームが、ユーザー間のメッセージのやり取りを閲覧するような、既存の暗号化技術を損なうことを求められる場合、英国市場からの撤退もありうると示唆していた、と報じられている。これを受け、英国政府側も、企業によるコンテンツの確認が「技術的に可能な場合」かつ、児童に対する性的虐待に関するコンテンツを最低限の正確性をもって検知できる場合にのみ、Ofcomによる干渉を可能としたとされている(「フィナンシャル・タイムズ」9月7日)。
(注1)オンライン上で、未承諾の性的画像を送信する行為。
(注2)本人の同意なく、特定の人物に似るように編集されたポルノ。
(松丸晴香)
(英国)
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