国内最大規模の自動運転試験施設、クアラルンプールに開設

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年11月16日

マレーシア科学技術・イノベーション省(MOSTI)傘下の技術革新アクセラレーター(MRANTI)は11月9日、国内最大規模の自動運転試験施設「MRANTI AV XL外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」をクアラルンプールに開設した〔MOSTIプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(マレー語のみ)〕。同施設は、マレーシアのモビリティ部門の発展を促進するため設計されたもので、自動運転車(AV)および次世代車両(NxGV)に関する試験と研究を行う。

チャン・リーカン科学技術・イノベーション相は「本施設の取り組みは、自動運転車試験場の創設や次世代車両開発の促進といった目標を掲げた、国家自動車政策(NAP2020)(2020年3月2日記事参照)を下支えすると同時に、自動車セクターを重点分野の1つに据える新産業マスタープラン(NIMP)2030(2023年9月7日記事参照)にも沿っている。将来的には、効率性向上や炭素排出量の削減にもつながる」とし、施設の開設が最近の関連政策に準拠したものであることを説明した。

施設は、財務省傘下の企業フューチャライズと提携し設立したもので、12キロの標識付き試験走行コース、立体駐車場、実際の試験を実施する前に使用する仮想空間、5G(第5世代移動通信システム)ネットワーク、超高速データ通信設備などを備えている。さらに、マレーシアの公道で使用できる自動運転車を認定するためのプログラム(MRANTI Deploy AV-as-a-Service)も検討しているという。MRANTIのウィラ・ライス最高経営責任者によれば、本施設が設置されているMRANTIパークは、マレーシア初の5G対応イノベーション施設で、高い通信効率、接続密度、位置精度が保障されているという。

チャン氏は「(施設は)企業や研究者などが、管理された環境下でソリューションを開発できるよう、必要なサポートを提供するものだ。自動運転分野のイノベーションを促進し、モビリティ分野の構想を現実の世界に実現できれば」と意気込みを見せた。自動運転に対する懸念にも配慮し、「実際のところ、クアラルンプールのモノレール、大量高速輸送システム(MRT)、軽量高速輸送システム(LRT)などには、既に自動運転技術が導入されている。東京オリンピック時のバスや各国のロボタクシーなど世界中でも実用は進んでおり、米国コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーによる調査では、2030年までに新車の少なくとも12%が自動運転レベル3~5を搭載すると予測される。自動運転技術は、電気電子などの製造業、ソフトウェア、物流、農業、ヘルスケアといった他の業界にも有益で新たな可能性を与えるものだ」と付け加えた。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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